コロナによる打撃は飲食業の倒産だけではない。事業承継問題はさらに大きくなっている

2021.01.18

経営・マネジメント

コロナによる打撃は飲食業の倒産だけではない。事業承継問題はさらに大きくなっている

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

新型コロナウイルスが拡大する以前から、中小企業での事業承継問題は大きな課題だったが、このコロナ禍で、さらに大きくなっているようだ。新型コロナウイルス拡大による企業の休廃業リスクはさらに高まっており、事業承継はこれまでどころではない事態となっている。

新型コロナウイルスが拡大する以前から、中小企業での事業承継問題は大きな課題だったが、このコロナ禍で、さらに大きくなっているようだ。

経済産業省によれば、現状のままいけば、2025年までに、127万人の経営者が70歳以上かつ後継者未定になり、それは日本事業者全体(全体の企業数を約380万者とすれば)の3分の1にあたるとされている。

仮に、それらの企業が廃業、あるいは消滅した場合は、多数の雇用やGDPが失われるのは間違いなく、380万者という事業者数はかなり古いものであることから見れば、今ではすでに企業数は大きく減少しているのも間違いない。推論すれば、この企業数の減少がGDPの停滞と関連しているのも間違いないだろう。ITを中心としたスタートアップベンチャーも増加傾向にあるという話を聞くこともあるが、それ以上に事業者の減少が止まらない。

こうした人口ピラミッドの社会的な背景にはどう抗うこともできないが、そこにコロナ禍がやってきた。

新型コロナウイルス拡大による企業の休廃業リスクはさらに高まっており、事業承継はこれまでどころではない事態となっている。

帝国データバンクは、中小企業の事業承継問題について、調査結果を公表したが、やはり、コロナ禍による影響は少なくないようだ。

まず、新型コロナウイルスの拡大を契機に事業承継への関心が高くなったと答えた企業が8.9%だったという。大半は変わらないと答えているものの、事業者によっては、「コロナ禍で事業の業績がまったく計算できず、事業承継どころではない」「これまでは、どうしようかと迷っていたが、完全にあきらめた」という声も相当あるのではないかと考えられる。 もはや、将来への見通しもつかない事業者がかなりの数に上ると思われる。

次に、「企業割で事業承継の計画があるものの、うち半分以上が進めていない」という結果も紹介されている。

「すでに事業承継を終えている」企業は12.3%(これは、40歳代以下の経営者に多く、すでに引き継いだ経営者が答えていると思われる)

「計画があり、進めている」企業は18.7%

「計画はあるが、まだ進めていない」は21.1%

「計画はない」は34.8%

つまり、3分の1の事業者は、事業承継の計画すらなく、少なくとも300万者以上ある、中小企業・小規模事業者の数を見れば、これで将来大丈夫なんだろうかとも思える。さすがに、2025年に経営者が70歳以上となる事業者では、そういうことはないだろうと思ったのだが、現在60歳代の経営者においても、計画がないは31.3%、わからないが13%、70歳代においても、計画がないは20.9%、わからないは12.7%にも上る。やはり、3割以上の経営者は、事業承継の道筋は見えていないことになる。

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