今回のコロナ禍で日本企業が、高い興味を感じているのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。先だって私が講演したセミナー参加者のアンケートでも調達部門のDXやIT活用に対する関心は、非常に高いことが結果として出ています。 それでは調達購買部門のDXはどのように進んでいくでしょうか。
11年前にリーマンショックがありました。リーマンショック後、多くの日本企業はコスト削減を命題として取り組んでいきました。
特に従来であれば、あまり目が向けられなかった経費や投資などの外部支出(いわゆる間接材調達)も対象とされ、コスト削減に力が入れられたことを記憶しています。このような企業の支出全体を対象として、購買機会を戦略的に捉え、コスト削減を図っていく手法は「戦略ソーシング」と言われ、欧米企業では従来から、その取組が進んでいました。一方、日本企業で「戦略ソーシング」という取組みが一般化したのは、まさにリーマンショックがきっかけだったと言えます。しかし、当時間接材調達のコスト削減のスペシャリストは、日本国内には数えるほどしかおらず、多くの企業が、コスト削減をサービスとする企業を使いました。この時期には、上げられた成果に対する一定割合を報酬とする、いわゆる成果報酬型コスト削減サービスへのニーズが高まったことが、特徴でした。
一方で、今回のコロナ禍においては、このようなコスト削減活動への関心はあまり高まっていないように感じます。一部の事業者による同様のサービスの広告をネット上で見る機会は増えているものの、先のリーマンショック時ほど、コスト削減ニーズの高まりは、今現在感じられません。
他方、高い興味を感じているのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。先だって私が講演したセミナー参加者のアンケートでも調達部門のDXやIT活用に対する関心は、非常に高いことが結果として出ています。同様に日経新聞が8月に開催した、ダイキン工業の購買担当執行役員のWebセミナーでも、IT活用が今後の調達業務において欠かせない、というアンケート結果が高くなっているようです。
このようなことから考えると、コロナは正に調達購買部門のDX進展のきっかけになると言えるでしょう。
しかし、調達購買部門のIT活用はこの20年程度、殆ど発展が見られません。しいてあげればEDIの発展普及、インターネットの活用、間接材購買システムの導入が進展した程度です。2000年代の初めに購買品やサプライヤに関する様々なデータを収集し、そのデータを活用し、分析を行い、様々な戦略やコスト削減活動につなげるというCSM(コンポーネンツ・サプライヤ・マネジメント)というITツールが出てきましたが、これは殆ど普及しませんでした。
調達購買のコア業務と言われるソーシングプロセスの標準化、自動化のための、いわゆるe-RFxツールも殆ど活用されておらず、未だにメールと添付ファイルで見積りのやり取りが行われているのが実情です。
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2021.02.25
2022.02.19
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。