「AIが表情で人物を見抜く」「採用面接でウソの見抜き方」といったたぐいのパブ広告のようなニュースを見かけます。全知全能の神・AI様なら本当に失敗のない採用ができるのでしょうか?
・問題は人間にあった!!
つまりシステムが良いの悪いのいう以前に、面接を機械化、AI化、外注化したいと考える企業は、そもそも採用基準を明確化できているのでしょうか。もし既に明確な採用基準があり、その基準に沿った選考ができているのであれば、社員の定着率も高く、人事管理もすばらしいものなのでしょう。(皮肉でいっています。そんな会社がこの世にそうそうあるとは思えないので)
そうではなく、ちゃんと社長や取締役事業本部長自ら面接したのに全然ダメだったということはないのでしょうか?(絶対あるに決まってると思って、皮肉でいってます)つまり、元の人間による選考自体が上手く行っていなかったのではないでしょうか?
そうだとすれば、繰り返しますが機械は正解を下さる全能の神ではありません。
「オレは目の光を見ればわかる」
「(仕事できそうな)オーラがある」
こんな面接官が意思決定している限り、現状のAIがどれだけ優秀でも結果は見えています。当たり前ですがインプットを超えるアウトプットなどあり得ません。つまり採用面接の戦略策定もできず、判断基準も数値化や明文化できない採用は、AIだとて質を上げようがありません。
・コンピテンシーこそ採用の柱
私の理解では、現状でもしっかりした戦略観に基づき、一定の数値化・客観化できる採用基準があり、何よりもその採用する職務で求められるコンピテンシー(成果の再現性)と照らし合わせた面接ができている。しかしそうした選考ができる面接官の人手が足りないという組織であれば、AIはきっと役に立ってくれるのではないでしょうか。容貌や雰囲気、良くも悪くも学歴などで惑わされがちな人間と違い、機械学習で採用基準を学び取り、その基準とのかい離を補正してくれるのかも知れません。
応募者の表情から笑顔や発言の真偽を見抜く手法があり、AIだけでなく取り調べ経験のあるコンサルタントの面接指導サービスなどもあるようですが、面接でウソほんとを見分けて何の意味があるのかと思います。緊張して笑顔がひきつる人、無表情で機械的な接客を好む顧客、ビジュアルより書類の精度や段取りを重視する業務が、こんな表層的な基準だけでわかるはずがありません。
業務で成果があったかどうか、応募者が「成功した」と言ったかどうかなど何の意味もない質問です。コンピテンシーを問うには、事実や真偽より、どうやってその仕事を成功させたのか、その段取り、苦労・失敗、予定通りに進まなかった時の判断といった、当事者でなければわからないであろう「思考」を見ることが面接です。
いまだに面接で「あなたはコミュニケーション能力がありますか?」と聞いているような会社は、ターミネーターを持とうが、液体金属でできた改良型モデルだろうが、多分宝の持ち腐れと化すことを懸念してやみません。
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2021.01.04
2009.02.10
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。