コロナ禍がもたらすのは「処し方の変化」か「在り方の変化」か

画像: けんたま/KENTAMA

2020.07.14

経営・マネジメント

コロナ禍がもたらすのは「処し方の変化」か「在り方の変化」か

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

私たちはこの第1波コロナ禍で、いろいろなことが「変わった/変わるだろう」と口々に言います。確かに多くのことが変わるのでしょう。しかし、変わるといっても、表層的な変化と根本的な変化、外的な変化と内的な変化、といったように質やレベルがあり、そこに注視することが重要だと思います。

しかし、従業員の幹や根を育まないツケは会社に返ってきます。枝葉の細分化した業務スキルに閉じ込めた従業員の中には、30代半ばを過ぎたあたりから硬直化し、配置転換しようとしてもうまく動かせない人が出てくるのです。

個々人が100年を生き、会社組織が従業員を60代70代まで雇い続ける時代に、キャリア形成・人財教育で重要なことは、「処し方」次元で従業員を部品的に資源化するのではなく、「在り方」次元で全人的に育むという大きな転換をせねばならないということです。

◆スキルを拠り所にすればするほど不安感は増す

次に、視点を働く個人に移します。多くの人にとって、自分が雇われ続けるための方策としてまずあるのが、ともかく需要のある知識・技能を身につけて、自分を買ってもらおうという「スキル習得」アプローチです。

時代の変化に合わせて、あるいは雇ってくれる側の要請に合わせてスキルを習得・更新していく。それ自体はまったく必要な行動なのですが、長期的な視点でながめれば、枝葉次元の対処法であって、根幹的な取り組みにはなりません。

「スキル習得」アプローチは下図で示すように、変化していく表層を「いかだ」を次々に乗り換えて、何とか職をつないでいく対応です。


「処し方」に長けようと枝葉のスキル習得でがんばっても、AI(人工知能)や作業ロボットとの競走が出てきます。有能な若手もどんどん伸びてきます。キャリア・人生において変化対応は不可避ですが、移り変わるものに自分の拠り所を置くほど不安は増します。

ではどういうアプローチがなされるべきか。私はそれが「マインド・観醸成」アプローチであると提言しています。

◆スキルを鋤・鍬として自分を掘り起こせるか

マインド・観は「在り方」を問います。そして「在り方」はライフワーク(生涯にわたって携わりたい仕事)やソウルワーク(魂の声を成就させる仕事)、道(探究・鍛錬としての仕事)を生み出す源になるものです。知識や技能といった処し方はその下に来る手段的要素ととらえます。それが下図の「耕作的キャリア」です。


不変・普遍のものをつかめば、変化も悠然と楽しむことができる。これが健やかに長く職業人生を送っていくための鍵だと思います。もちろん最初から自身の在り方がわかっていて、ライフワークを見つけられる人は稀です。若いころはスキル習得に右往左往しながら「いかだ移り」をやることでいいでしょう。問題はそこからです。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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