水産物取扱量は想定の5割と低迷 ── 開場から1年。苦境に立つ豊洲市場

2019.11.20

経営・マネジメント

水産物取扱量は想定の5割と低迷 ── 開場から1年。苦境に立つ豊洲市場

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東京都が約5700億円かけて整備した中央卸売市場「豊洲市場(江東区)」が開場して、早くも1年余りが過ぎた。 昨年(2018年)10月の開場当初は、施設の使い勝手を懸念する声も多かったが、初めて迎えた今年の夏場は、移転前の築地にはなかった空調管理システムが威力を発揮。連日の猛暑を無事に乗り切り、今秋10月に開場1周年を記念するイベントが盛大に開催された。 ただ、光熱費や設備費などの運営コストがかさむ中、市場の水産物取扱量は都の想定を大きく下回る状況が続いており、今後の運営に向けてシビアな課題も浮上してきている。

一方で、市場本来の機能を数字で見ると、そうは言ってもいられないシビアな実態が浮かび上がる。
豊洲市場の広さ(40.7ヘクタール)は、手狭だった築地市場の約1.7倍。敷地内には水産仲卸売場棟、水産卸売場棟、青果棟などの大型施設をはじめ、魚介類の調理~パックまでできる加工パッケージ棟や、他市場への転配送に対応する施設も新設されている。
ただ、これだけの広さと近代設備を誇りながらも、肝心の取扱量は築地時代より落ち込んでいるのだ。

都は昨年8月、豊洲開場後の5年間で水産物の取扱量を、築地時代の1.6倍(年間62万トン)に引き上げる計画を打ち出している。魚介の品質を保持する閉鎖型の低温管理施設を完備し、加工パッケージ施設も新設したことで、デパートやスーパーなどの需要にも応えられるとの期待があった。

しかし、市場を通さない流通の拡大などが響き、開場から10ヵ月間(2018年11月~2019年8月)の水産物取扱量は、前年同期6.2%減の28万9505トン、金額ベースで同4.1%減の3363億円と低迷。数字としては国内最大を死守しつつも、計画に対する達成率は55%にとどまり、都の想定を大きく下回る結果となった。

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都の市場管理業務に民間経営手法の導入を検討

ここ近年、産直・ネット販売の普及による市場離れや消費者の魚離れなどが進行し、かつての築地市場でも、水産物取扱量がピークだった1987年の約81万トンから半減。全国各地の中央卸売市場でも、取扱量減少などの影響を受け、施設の統合・縮小・廃止に追い込まれるケースが年々増加している。

ちなみに、都は市場会計に築地市場跡地の売却代金(約5300億円)をキャッシュで確保しており、会計上は赤字が続くものの、約50年間は豊洲市場の事業継続が可能との見通しを示している。とはいえ、年間数十億円に及ぶ赤字の縮小に向け、取扱量の増大や日々のコスト削減への取り組みは急務だ。

そうした中、都は今年7月に「市場の活性化を考える会」を立ち上げ、企業経営や財務会計の専門家らと中央卸売市場の運営に関する議論を開始。同会では「民間経営手法の導入」を主軸に掲げ、公営の管理業務に民間の手法を取り入れることで、市場の継続活性化・効率化を図る方針を打ち出している。
今後、豊洲を含めた都内11市場の経営のあり方を分析・検討し、2020年度中に提言をまとめる予定だ。

苦境の中で迎えるこれからの1年が正念場に

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