筆者は「顧客視点」の重要性を常に説いているが、それはマーケターとしての基本スタンスでもある。「顧客中心主義」や、「顧客満足の最大化」などを掲げる企業も多くなってきているし、「すべてはお客様のために」というスローガンをなども多く目にするようになってきた。よき世の流れだと思う。 だがしかし、もう少し注意してみてみると、気になることがある。
「便利言葉」と筆者が命名したものがある。耳に心地よく、その言葉を遣うとあたかもそれを実現しているような気になってしまうものだ。美辞麗句ともいうのだろう。実体を伴っている場合はいいが、単なる掛け声やスローガンだけで終わっていないか注意することが必要だ。
もう一つ気になるのは、特に「お客様のため」のような、主語を顧客にして、「何かをして差し上げる」というような捉え方をしている場合だ。
商売を営む者が顧客のことを真剣に考え、働きかけるのは当たり前のことではないか。きちんと文章にするなら、「我々(自社)は、お客様のことを真剣に考え、お客様のためになることを常にいたします」であり、主語は自分自身であるはずなのだ。
さらに問題は、なぜ、そのように行動しなければならないのかが正しく認識されていないケースだ。「お客様のためになることを常にする」のはすばらしいことなのだろうか。確かに、言うは易く行うに難い言葉ではあるが、これまた商売としては至極当然なことではないだろうか。何もスペシャルなことをしているわけではない。
やはり、物事はウラとオモテから考えよう。当たり前にお客様のために行動するとどうなるのか。そうすれば、やはりお客様も感情がある生き物だ。当然のこととはいえ、キチンと自分に励行されれば気分がいいだろう。信頼感も増すだろう。顧客満足は結果として達成されることなのだ。
では、ウラから考えてみよう。お客様のための行動が徹底できない場合だ。当然のことが提供されなければ、顧客からの信頼は失われる。満足などとは程遠い。離反する。どんどん顧客がいなくなる。商売が立ち行かなくなる。
つまり、この場合、行動を徹底するにはウラから考えたほうがわかりやすいだろう。「便利言葉」にならないように、全文で書いてみよう。
「我々は、お客様のことお真剣に考え、お客様のためになることを常にいたします。なぜならば、それができなければ、お客様の満足は低下し、信頼も失墜し、お客様が離反し、ついには商売が立ち行かなくなるからです」。
いかがだろうか。「お客様のため」ではなく、「自分たちのため」であることがご理解いただけただろうか。顧客中心主義とは、顧客のことを考えて、自分たちのために、自ら為すべきことを、淡々と当たり前に行うことなのだ。「凡事徹底」である。
さて、ここから話題のスケールをグンと大きくしよう。地球環境に目を向けてほしい。
環境負荷軽減を図る「地球にやさしい」取り組みとして、エコバックやレジ袋削減にはじまり、さまざまな温暖化ガス排出削減の取り組みがなされている。それはすばらしいことだし、さらに推進すべきものであるのは間違いない。
しかし、ふと立ち止まって考えれば、それは誰のための取り組みであるのか、みながきちんと理解しているのかどうかということだ。
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2008.03.14
2008.03.14
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。