「スイスイ行けるICカード」と名打たれた「Suica」が発売されたのは2008年の頃。ICカードの普及を機に、きっぷを購入する人の数が激減しました。同様に、外出先で急に現金が必要になったのでコンビニのATMへ駆け込む人の数も、ここ最近は減少傾向にあり、現金を持ち歩かず、支払い時はカードやスマホアプリで……といった具合に、私たちのお金事情も大きく様変わりしつつあります。銀行の窓口併設店舗数の移転・統合が加速し、店舗の数が大きく減少しています。その一環として、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は2019年前半にATMを相互開放しており、将来的にすべてのATMの開放を検討していると発表。この変化は、ネットバンキング等を活用する人が増えたことでATMの稼働率が落ちたことと、相互開放による固定費削減がその背景にあるようです。そこで今回は、大きく変容する銀行をとりまく“いま”を紹介。
一方、公的資金によって生き残ることができた銀行も、地価急落による巨額の不良債権、デフレ、金融ビッグバン等など負の遺産処理に翻弄され、都市銀、地銀を問わず再編・合併・統合を強いられ、大手銀行の数は23行から5陣営に集約。
銀行業界に起きた出来事をこうして見ていくと、銀行は憧れの企業といった通念が、令和の時代の今ではもはや遺物でしかないようです。そして、そこにさらに拍車をかけたのが、消費税アップに伴うキャッシュレス化の大波です。
悲願を達成したみずほ銀行
ここからはみずほ銀行を取り上げて、大手都市銀行の“いま”をみつめていくことにします。
みずほ銀行の新システムへ移行に伴い、定期的にオンラインサービスを臨時休止していたことはみなさんご承知の通りです。ATMを使って入出金ができない週末がくるたび、みずほ銀行に口座を開設している人は大きな不便を強いられましたが、度重なる臨時休止を行ったうえで、新たな勘定系システムへの移行作業は「2019年7月切替完了」と正式発表。
この“切替完了”は、“17年越し、20年越しの悲願”ともいわれ、RPGのような壮大な体制構築といえるものだったのです。
というのも、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が銀行再編によって統合したみずほ銀行では、統合後もそれぞれの銀行が個別に使用していた富士通、IBM、日立のシステムを使用する状態がずっと続いていました。
みずほ銀行といえば店頭の広告に記された「Oneみずほ」の旗印が思い浮かびますが、「Oneみずほ」とは裏腹に、窓口の外側にいる客からは見えないバックヤードでは、前身の富士銀行出身の行員と、第一勧業銀行の出身の行員が使用していたシステムが異なっていたため、同じ銀行の行員でありながら、長らく異動や事務処理が縦に分断されていた期間が続いていたとされています。
こうした状況を見かねてシステム統合に踏み切ったものの、顧客の全資産情報の総量は膨大であり、かつデリケートな側面が強い点から、現場は予想以上に混乱した……との報道が、一部メディアで報じられていました。
そうした背景を知ると、大規模なシステム障害が発生し、ATMの機能がダウンしたことが一度の話ではなく、金融庁の「立ち入り検査」「業務改善命令」を受けたことにも、少し納得がいくかもしれません。
「行員の副業を認める新制度」まで発表
しかしながら、システムへの移行(統合)が今年7月にようやく完了したことでホッと一息つけるかと思いきや、折しも10%へと消費税の課税比率がアップ。
わかりにくい軽減税率、年配者には縁遠いキャッシュレスといったキーワードが横溢する中、変化の全体像がぼやけてしまった感は否めませんが、確実に世の中は大きく様変わりしています。
つまりは消費税率アップによって、皮肉にもみずほ銀行の新システムの真価が時代の変化に見合ったものであるかどうか……が、試されることになったのです。
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