学校の闇とコンプライアンス意識 ハラスメントは光を嫌う原則

2019.10.15

組織・人材

学校の闇とコンプライアンス意識 ハラスメントは光を嫌う原則

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

神戸市で起きた教員間いじめ問題について、現校長の謝罪会見に続き、暴行事件当時の責任者である前校長もインタビューで「(暴行事件の存在を)知らなかった」との釈明を行った。暴行犯である当事者や、その管理責任を一義的に負うはずの校長連中の逃げの一手、教育委員会の要を得ない説明は、学校業界のコンプライアンス意識欠如を如実にさらけ出している。

・「いじめ」と称する暴行を黙認した責任
民間企業や官公庁等でもハラスメント研修やコンプライアンス研修が多数開かれるようになった。筆者も幹部層から現場担当者まで、広く階層別、業界別のハラスメント対策や研修に関わる過程で、危機意識こそ最も重要であると実感している。危機意識の無い、当事者感覚が欠如する組織はハラスメントリスクの塊であり、実際に神戸市立東須磨小学校のようなコンプライアンスという存在すら認識できていない場所で事件は起こってしまった。

学校業界だけは治外法権が認められているのだろうか?刑法に違反する行為であっても、「いじめ」とさえ名付ければ警察にも引き渡されないことも少なくないようだが、東須磨小教師への集団暴行は、当初の教育委員会による発表だけでもその異様な実態が目を引くものだった。その後犯行動画が公開されたことでテレビニュースにもなり、批判は増すばかり。

涙ながらに謝罪した校長だが、同情の声はほぼ聞こえることはなく、批判は止む気配を見せていない。子供のいじめ問題でも、学校側は「知らなかった」「いじめと認識していなかった」などといった言い訳で弁解する姿はよく見かける。

ハラスメント研修でもしつこく説明しているがハラスメント事件において「知らなかった」「そこまで深刻と思わなかった」という管理者の言い訳h一切通用しない。過去の判例でも、管理者と組織責任は厳しく追及され、暴行当事者ではない組織そのものが賠償責任を負った例は多数ある。

・学校という闇の勢力
公務員でもある公立学校教師は、懲戒解雇になることもなく学校を変わり、事件後も生き延びることは可能となっている。暴行の証拠動画もモザイクで保護され、氏名も明らかにされず、「誰も責任を負わない」まま、暴行事件はうやむやに風化されていくとすれば、そんなことはなぜ許されるのだろうか。

ハラスメント問題の対応では組織そのもの、つまりは組織責任者が大きな責任を負う。罪を犯しても処罰されないという結果は、確実にそのゆがんだ組織にモラルハザードを招き、組織の倫理と秩序は崩壊する。

事件をもみ消したい勢力を根絶するには、暴力がはびこる土壌を根こそぎにするしかないだろう。無責任という害虫の駆除には、その根っこを断ち切るしかない。それは責任の徹底追求である。公務員は頑強な身分保障に守られているとしても、悪事をさらけ出すところまでは行けるはずだ。

コンプライアンス意識の欠落した組織は闇の勢力と呼ばれてもしかたがない。闇は光を嫌うのである。教師が闇の総力とは皮肉に過ぎるが、実際に東須磨小学校で起きた事件はただの悪質な暴行事件である。闇と呼ぶ以外にない。

次のページ・逃げ隠れ、うやむやを許さない再発防止策

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

フォロー フォローして増沢 隆太の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。