ここ近年、長引く低金利や人口減少などの影響で業績が低迷し、かつてない苦境に立たされている地方銀行。将来的に存続できる地銀は現在の半分以下という厳しい予測もあり、生き残りをかけた経営統合や事業連携などの再編が相次いでいる。 そうした中、大手地銀の横浜銀行と千葉銀行が今年(2019年)7月10日、業務提携で基本合意したと発表。 このタイミングで首都圏の地銀両雄がタッグを組んだインパクトは大きく、関東を中心とした地銀他行の経営戦略にも少なからず影響を与えそうだ。 今回は、東京湾をまたぐ「二強連合」による新たな展開とともに、大きな変革期を迎えた地方銀行の今後について考察する。
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地元県で圧倒的な顧客基盤を築く横浜銀行・千葉銀行
地方銀行としては総資産が全国首位の横浜銀行(本店・神奈川県横浜市)と、2位の千葉銀行(本店・千葉県千葉市)。
両行はそれぞれ地元県で圧倒的な顧客基盤を築いており、神奈川県に本社を持つ企業のメインバンクとしては、横浜銀行がシェア22.1%でトップ、千葉銀行は千葉県内で41.3%のシェアを持つ。
一方で、神奈川県内での千葉銀行シェアは0.02%、千葉県内での横浜銀行シェアは0.03%と、営業エリアでの競合はない。
地銀の中でも恵まれた経営環境にある両行が手を組むことで、そのアドバンテージは一気に拡大する。2019年3月末時点で横浜銀行の総資産は16兆8000億兆円、千葉銀行は14兆8000億円。総資産が5兆円未満の地銀も多い中、両行合わせて30兆円にも上る「二強連合」の規模は群を抜く。
また、2019年3月末時点の両行の個人顧客数は合計930万人で、神奈川・千葉の両県の総人口(1550万人)の6割に達する規模となる。同じく、事業性融資先数は合わせて約9万5000先。
東京商工リサーチの調査によると、横浜銀行をメインバンクとする企業数は1万7937社で全国10位、千葉銀行は2万2189社で全国6位だが、合算すると都銀のりそな銀行(約3万7000社)を上回り、3メガバンクに次ぐ4位に躍り出る。
両行が業務提携で得られる多大なメリット・補完効果
上記の基本データを見てもわかる通り、ほぼ同規模の営業基盤を持つ横浜銀行と千葉銀行は、業務提携によってそのポテンシャルが「倍増」することになる。
両行では、互いが保有する分厚い顧客基盤を共有することで、資金需要の掘り起こしだけでなく、M&Aや事業承継、顧客紹介、ビジネスマッチングなどの金融サービスも開拓する狙いだ。
提携発表の記者会見で、横浜銀行の大矢恭好頭取は「提携効果の目標として、3ケタ億円(100億円)以上を実現したい」と強い意気込みを見せた。
また、両行が強みを持つサービス分野での補完効果も見込める。
横浜銀行は顧客のライフステージに合わせて、長期分散積み立てなどの資産運用を提案する投信サービスに定評がある。
今年6月には「顧客本位の投信販売会社」として、格付投資情報センター(R&I)から「Aプラス」の格付けを受けている。
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