言わずと知れた世界の雄「トヨタ」。そして、日本を代表する総合家電メーカー「パナソニック」。 いずれも超巨大企業である点は共通しているものの、業種としては異なるように見える両者。しかし、住宅事業という「第三の業種」で手を取り合い、共同で新たな事業を展開しようとしていることをご存じだろうか。 新規共同事業で両者が掲げるキーワードは、未来を見据えた「スマートシティ」だ。さて、両者の思惑はいったいどこにあるのだろうか?
たとえば外出していても、家の電化製品のあらゆるものがスイッチオンになったりオフになったり、家に着くころにはお風呂が沸いていたり、帰宅1時間前に自宅の暖房や冷房のスイッチをオンにできること。あるいは、ほとんどハンドル操作を必要としない自動運転の車や、運転手のいないバスが街なかを走っている近未来都市をイメージしたもの……それがスマートシティだ。
両者の技術を集結し、スマートシティを具現化
こんなスマートシティづくりへ向けて、実は両者ともすでに具体的に動き始めている。
トヨタは、通信機能を持つ「コネクテッドカー」の投入を加速しているほか、東南アジアの配車事業最大手、グラブに出資するなど、移動事業の拡大を進めている。2020年代前半には、移動店舗などさまざまなサービスにこたえる自動運転車「イーパレット」を実用化する予定だ。これらの技術がスマートシティづくりに生かせると考える。
パナソニックには、もともと照明や空調などの技術を生かした住宅まわりのクリエイトで強みがある。家電や配線器具など幅広い商材を扱えるため、競合の住宅メーカーよりも柔軟に住空間の要望に対応することが可能だ。最近では、住宅と家庭内の電気器具をインターネットでつなぐプラットフォーム「ホームX」の技術を生かした家づくりを行っており、これらのノウハウをスマートシティづくりに生かす予定だという。
「住宅」「建設」「街づくり」の3分野で共同事業
トヨタ、パナソニックとも、これからの未来都市スマートシティでは、自動車メーカー、家電メーカーといった従来の個別の業態では対応が困難と考えている。垣根をとっぱらった技術革新と新サービスが必要なのは目に見えており、新しい産業構造をも見据えた取り組みへの端緒をきったといえる。スマートシティが現実のものとなれば、生活の価値観に変化が起き、家のあり方や街のあり方が根本的に変わる可能性がある。
1/住宅事業
すでに定着しているトヨタホームズ、ミサワホーム、パナソニックホームズのブランド名は残し、それぞれの個性を強化するとともに、調達、製造、物流などバックヤードの共通化によって業界トップクラスの競争力を目指す。
2/建設事業
オフィスやホテル、商業ビル、病院、学校などにおいて、パナソニック建設エンジニアリングや松村組のもつデジタライズ、ロボティクスなどの建築技術を活用して、効率化、省人化、自動化による競争力向上を目指す。
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