文化放送The News Masters TOKYO『マスターズインタビュー』。 今回は、キッコーマンの代表取締役社長の堀切功章さん。 堀切さんは1951年、キッコーマン創業八家のひとつ、堀切家の次男として生まれる。慶應義塾大学を卒業後、現在のキッコーマンに入社。2013年、社長に就任した。 創業八家からの出身ではあるものの、その地位の保証はなく、社内の対立にもさらされたことも...。創立100周年を迎えて、日本の食文化を担うキッコーマンはどのような局面に立とうとしているのか? 文化放送『The News Masters TOKYO』のパーソナリティ・タケ小山が迫った。
トップはブレてはいけない
今でこそ、当たり前になったキッコーマンの「つゆ・たれ」。しかし、ここには板挟みや葛藤もあったと堀切社長は振り返る。
というのも、本格参入当時の責任者は、まさに現在の堀切社長。当時は、麺つゆやだしなどの「つゆ・たれ」への家計支出がしょうゆを上回り始めた頃だった。
「つゆ・たれの担当を私が担いまして。大変でしたね」と笑って振り返る堀切社長だが、当時はそんな穏やかな心境ではなかった。
その悩みの種のひとつは、しょうゆに関してはかなりの技術があるが、つゆ・たれは「加工」の産物。そのノウハウがなく、試作商品は好評でも、大量生産化すると不思議とその品質には届かない。満足いかない品質に、半年間は夜も眠れないような思いだったそうだ。
もう一つの悩みの種は、新しいことをやろうとすると必ず現れる「抵抗」。
今まで原料として取引していたつゆメーカーや、さらに、その会社担当の営業も同様に反発する。そういったことは予想できたが、それでもなおトップからの「自社ブランドで育てていくんだ」という意思を受けて邁進しており、同時にそれが精神的な支えとなっていた。
タケ:
当時の社長・茂木友三郎さん(現・キッコーマン名誉会長)は、やるんだ、と?
堀切社長:
はい。社内外での抵抗は私のところに来ましたが、トップはブレてないんです。方針が明確にされているから、風当たりは強いけれど、やっていることは間違いないんだと。
それは自身がトップになった時の勉強になっており、今の経営にも生かされているそうだ。
堀切社長のマインド
「つゆ・たれ」の参入をはじめ、様々な事業を手掛けてきた堀切社長。
今、その中にはどのようなマインドが備わっているのだろうか?
■堀切マインドその1:現場主義
「これまで自分で見たり聴いたり感じたりすることを基本にして仕事をしてきました。トップになってもそれは同じで、現場を知らないと意思決定の際に自信が持てないのです」
現場主義の精神に関してこう語る堀切社長。製造の現場や販売の現場では、社内コミュニケーションを密にとるようにしているという。
「他にも、社長になった時に社員の夢を尋ねたそうですね?」とタケが問う。
事業会社のキッコーマン食品の社長になった時、トップメッセージとして「夢を持とう」と社員に投げかけたことがあった。そのワケは、堀切社長の好きな言葉のひとつに「夢無き者に理想無し、理想無き者に計画無し。計画無き者に実行無し。実行無き者に成功無し。故に、夢無き者に成功無し」というものがある。
「皆に夢を持とう、と。何でもいいからメールで教えてくれ」と呼びかけたら、「自転車で世界一周」、「家族の幸せ」と返ってくる中で、「どうせ見てないよ」という声も聞こえてきた。「それなら」と全ての夢にコメントを返信したのだ。その数、およそ1000人。
タケ:
これ、返信するのにどのくらいかかりました?
堀切社長:
3ヶ月くらいです。
「どうせ見てないよ」と言っていた社員も、「まさか」と思ったに違いない。
■堀切マインド:その2「積小為大」(小を積みて大を為す)
タケ:
座右の銘が『積小為大』?どういう意味でしょうか?
堀切社長:
二宮尊徳の言葉だと聞いていますが。現場主義に繋がる言葉だと思っています。
日々の仕事なり、日々の積み重ねが成果につながっていく。これは、むしろ自分への戒めであり、一発長打を打てるスタープレイヤーも良いが「むしろ、ヒットを積み重ねてチームに貢献するイチローが好き」とも例えた。
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