文化放送「The News Masters TOKYO」のマスターズインタビュー。 今回は、引く手あまたのデザイン事務所good design companyを率いる代表の水野学さん。「くまモン」の生みの親としても知られている。 そんな水野さんにブランディングとは、センスとは何か?をパーソナリティのタケ小山が迫った。
ブランディングは小石を積み上げるような仕事
「ブランド」というと高級ブランドを想像するが、元々は家畜の目印のこと。いつからか、商品の信頼性を担保する意味に変わった。
ブランディングという言葉が一人歩きしているが、そんなに簡単に築けるものではないのだという。
神奈川のローカル鉄道「相鉄」の仕事でも、将来まで長く愛されることを想定した。東京圏で仕事をする人が、相鉄沿線に住みたいと思うような全体イメージを考えて、乗組員の制服や駅構内、ついには車両を塗る「ヨコハマネイビーブルー」という色まで新しく作ってしまった。
「相鉄には『安全×安心×エレガント』というコンセプトを提案しました。鉄道では安全・安心は当たり前なことなのですが、あえて言語化した上で、3つ目のコンセプトとしてエレガントという言葉を選びました。エレガントは横浜という町のイメージに沿ったものです。すべてそれに準じて、デザインしていきました。
例えばネイビーブルー(紺色)だと車両が目立たず、安全・安心にそぐわないのではという議論も起きました。でも実際は、線路が茶色ですから、補色効果で青は目立ち、問題ない。夜になったら闇に紛れて危ないという指摘についても、夜はヘッドライトや車内照明がつくので問題ないということになりました。
車両の色一つでも、コンセプトに照らして確かめながら外れないようにすることで、ブランドが固まっていくんです。企業ブランドは、言い方や見え方をしっかりコントロールすることで固まっていきます。ブランドというと大きな岩をイメージされると思いますが、むしろ小石を積み上げるようなことで、築いていけるのだと思います」
センスは良し悪しじゃない、量の問題
センスがある、なしは生まれつきだと諦めてしまいがちだが、水野さんはセンスには2種類あるという。
骨格や体質などが関わる先天的な運動センスと、絵や服の趣味など美的なセンスだ。特に美的センスというのは、後天的なものだと断言する。
「センスは生まれつきではありません。トレーニングでどんどん良くなるもの。知識が蓄えられていくと、それがその時に最適に使われているかが、わかるようになります。センスは良し悪しではなく、このゾーンでは、このカテゴリーでは、これが最適という評価ができるかどうかです。センスがいい企業には、知識があるということです。
頑固なラーメン屋さんは、ラーメン一徹だから、売れるラーメンを作ることができる、ということですね。大体、成功する経営者は頑固者が多いです。柔軟な部分もあって、人の意見も聞くけれど、最終的には自分の意志を貫く、それも膨大な知識を裏付けにしていないと、判断ができない。経営センスも、知識の量に比例すると思います」
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