欧州のユーロ圏諸国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)がここに来て悪化してきているようです。 ユーロ圏経済成長への陰り、景況感を検証してみたいと思います。そして関連する政治的要因、ECB(欧州中央銀行)の政策、ユーロの為替動向へも検証してみたいと思います。
各国経済の政治的要因
フランス:前段でも説明しましたが、黄色いベスト運動のデモ行動の結果、マクロン大統領が大盤振る舞いをしました。
最低賃金の引き上げ、残業で得た収入の非課税などの施策で約100億ユーロの政府負担が発生する見通しです。その結果、従来の2019年度GDP比財政赤字2.8%見通しが、3.2%に悪化する見通しとなりました。
EU欧州委員会の加盟要件である3%以内に抑える財政赤字ルールに反することになります。このため、政府は景気が急速に悪化した場合には、緊急の財政出動をすることが出来なくなる場合になる可能性が出てきていると言えます。
ドイツ:メルケル首相が与党CDU(キリスト教民主同盟)党首を辞任し、腹心のクランプカレンバウアー幹事長を選出しました。2021年まで首相の任期がありますが、求心力の薄れから来年にも首相退陣となる観測があります。
移民政策などで国民の不満が溜まっており、極右政党が台頭してきて、ドイツでもトランプ現象が見られます。政権の混乱が今後予想されます。
イタリア:イタリア政治は慢性的に短期の政権が誕生しており、不安定な政権が続いています。現在のコンテ首相も5つ星運動の支持を受けた連立政権であり、ポピュリズム政党が基盤にあると言えます。
国民にお金をばらまく政策が基本であり、必然的に財政出動が膨らみます。前政権がEU委員会に公約していた財政赤字対GDP比0.8%から、現政権の予算案で2.4%に膨らむ案となりました。
EUの財政規律ルールを無視することとなり、EU委員会からは承認を取れません。2.0%まで予算案を修正することになり、やっと承認が取れることになりました。こちらの政権も機動的に景気対策に財政出動ができない制約を受けることになります。
欧州中央銀行は当面利上げせず
ECB(欧州中央銀行)の対応を見ましょう。先週定例理事会を開催し、政策金利0.00%の据え置きを決定し、また量的緩和つまり国債などの資産購入の今月末での終了を発表しました。
消費者物価指数は直近11月2.0%とECBのインフレ目標2.0%に達しています。しかし、前段に説明したように、景況感は世界的な景気落ち込み観測、そしてユーロ圏の個別要因から次第に悪化してきています。
したがってECBとしても、流動性の供給を直ぐに絞ってしまうわけには行きません。これまで積み上げた資産約4.7兆ユーロの債券が償還時期に来たら再投資する方針を明らかにしました。
下記グラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)を参照ください。ECBの2028年までの資産状予想が詳しく出ています。各種資産が徐々に縮小してゆく方針であることが分かります。当面(2020年頃)は保有資産を減らさない方針のようです。
そして利上げ時期についても、来年夏ごろまでは利上げはしないとドラギECB総裁は明言されましたが、この時期が秋頃から冬の時期まで後ずれするのではないかとの観測が強まっています。
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