いまだに「お客様は神様」とかいう完全な勘違いが野放しの日本。現場の疲弊は巨大な経済的損失につながっています。人手不足倒産が起こるなど、危機的状況においても、クレーマーを育てる栄養を企業が与え続ける限り、害虫は繁殖していくことでしょう。
適正な利益を上げるような商売にするため値上げするのは当然の選択で、それが顧客から受け入れられないのであれば、その商売自体がもはや市場性を失っていると考えるべきでしょう。あるいは日産のパーツメーカーのように、さらなるコスト削減を受け入れる取引先を見付けることももう一つの選択肢です。この場合はサービス提供者である従業員確保ということになります。(対価に見合わない)低賃金で働いてくれる労働者をどこからか魔法のように見つけてこれるなら成り立つことでしょう。
3.サービス限界と顧客志向
お客様は神様という勘違いを育てているのは、それを会社に背負わせる経営者です。サービス業、小売業でありがちな「お店はお客様のためにある」という間違ったコンセプトに、いまだに縛られる組織がどんどん現場を疲弊させ、適正な商売を阻害しています。
サービスには必ず対価があります。対価以上のサービスを提供することはできません。その限界はコストという一線により明確に分かれます。しかし経営者自らがこの一線を破壊し、対価以上のサービス提供を現場に強要することは、クレーマーを付け上がらせ、育ててることとなり、真っ当なスタッフを潰すことです。
顧客志向とは当然のことながらお客のいうことを何でも聞くことではなく、お客の要望に沿えるようなシステムを考え、それが継続的に運営できるようにすることです。スタッフの努力や根性だけで成立するのであれば、それは経営とは呼べないでしょう。
せっかくの市場メカニズムによって、サービス提供者の給与が改善されれば、それはデフレ対策ともなり、またいわゆるブラック労働を駆除する効果もあったにもかかわらず、政府は外国人労働者を導入することで、こうしたコスト上昇を抑えることを決めました。真の顧客志向実現の機会は遠のいたと考えるべきだと思います。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。