前回のレポートでは、原油・商品相場にも注目し、株式、金利債券市場の参考にしましょうと記述しました。 しかし、その記述とほぼ同じくして、大きく金利・債券市場が動いてしまいました。 そこで、今回は現在の金利・債券市場の現状を説明してみたいと思います。
金利低下の要因
様々な金利低下の要因は、主に次の2つに色分けされます。
まず注目するのが、経済指標で悪い数字が散見されはじめたことです。
米第3四半期GDP(国内総生産)改定値は3.5%と良い数字です。しかし、住宅関連指標、自動車販売額などを見ると、悪い数字が出てきているように筆者は思います。
また、NYダウ平均に代表される株価が変調状況に陥る危険性を投資家は敏感に察知し、リスク回避行動として株価を売却し、安全資産である債券市場に資金移動をする行動に出てきています。今後は現金資産、つまりMMF(マネーマーケットファンド)に移す行動も相当に出てくると推測します。
また、世界的に見ると米中貿易摩擦の問題が大きいのではないでしょうか。
現在、米中双方が関税を課す応酬となってきています。先々週の米中首脳会議では、米国は来年1月追加関税を引き上げる制裁措置を一時的に見送り、知的財産権の侵害などの対応で90日以内に合意できなければ、関税を引き上げるとして、米中間は一時的休戦模様となりました。
しかし状況が悪いことに、中国IT企業の雄・ファーウェイの副会長がカナダで逮捕されたことで、米中貿易摩擦、さらに米中の将来の覇権争いの懸念が強まりました。
金融市場が一層悲観的になり、投資家が一斉にリスク回避措置に動いたことで、長期金利は一層利回り低下の動きになりました。
長期金利は、今後もリスク回避の動きが続くと利回り上昇の動きは抑えられます。そしてこの先、米国企業の減税効果からリパトリ(資金回帰)という要因が続くと、更に債券購入意欲が強まるでしょう。
その意味では、現時点では10年債で言うと、3.50%に達することは妄想のように映るのではないかと考察されるのです。
短期金利の動きと株式
では、短期金利の動きはどうでしょうか?
FRBが今月利上げに踏み切ることは、前段で説明しました。しかし、株式市場の混乱、米中貿易摩擦の深刻化によって、これまで予想されていた利上げのサイクルの終了が早くなるのではとの考察が強まっています。
ドル短期金利先物3月限では、11月初旬では2.75%前後、そして直近では2.80%の示現となっています。これは、FEBの政策金利FF金利の上限が今月0.25%引き上げられて2.50%となることを前提に、来年早々にも更に0.25%の上昇を予想した動きと言えます。
しかし、一方では上昇幅を急速に縮めていると見ることもできます。
短期金利先物や短い債券は利回り上昇の動きを継続していますが、その上昇スピードが弱まっていると言えるのです。
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