原油価格と商品相場が下落しています。今回のレポートでは、その下落相場が各国経済と各中央銀行に与える影響を考察したいと思います。
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
世界 | 3.7(0) | 3.5(-0.2) | 3.5 |
米国 | 2.9(0) | 2.7(0) | 2.1 |
ユーロ圏 | 1.9(-0.1) | 1.8(-0.1) | 1.6 |
日本 | 0.9(-0.3) | 1.0(-0.2) | 0.7 |
中国 | 6.6(-0.1) | 6.3(-0.1) | 6.0 |
注:%、前年比、かっこ内は9月予測からの変動幅 |
今年の見通しでは、9月時点からユーロ圏、日本、中国の数字が下方修正されました。今年はここから大きく景気後退は予測していないと言えます。来年は、世界全体の数字が今年よりも-0.2%低く、また中国の見通しが大きく低下する予測です。米国、ユーロ圏も若干の景気後退局面があるとの予測です。
米中貿易摩擦の影響のリスクを加味しているかは不明ですが、双方の国々で景気後退のリスクがあると予測しています。そして問題は2020年です。米国は2.1%、中国6.0%と大きく景気が落ち込む予測となっています。
日本は来年10月消費税引き上げがあり、その結果2020年は0.7%の景気予測と低めになっています。この数字全体を眺めていると、来年、そして2020年は景気後退局面をシナリオとして考えておく必要がありそうです。これも商品相場の相場下落と関連がありそうに思います。
FRBメンバーの発言に注目が高まる
米国で見ると、最近の主要経済テーマが米中貿易戦争になっているようで、投資家も悲観的な見方をしています。FRB(米連邦準備理事会)は、年内1回の利上げ(0.25%引き上げ、FF金利=フェッド・ファンド・レートの上限金利を2.50%とする。)は実施すると市場は予想し、織り込まれていますが、問題は来年以降です。
ハウエルFRB議長以下メンバーのコンセンサスでは、FF金利の引き上げサイクルの最終金利は概ね3.00%~3.25%に現状では置いているのではないかと思います。米中貿易摩擦、そして景気後退局面、そして最初の段で記述した原油・商品価格が景気後退局面を織り込む相場観になっていると言えます。
したがって、市場参加者の間では、来年以降の利上げの回数は2回程度に収まり、2019年後半もしくは、2020年前半にも打ち止め感が出てくるのではないかという声が聞かれます。そんなわけで、どうしてもタカ派と考えられているFRBメンバーの発言には注目が集まります。
それでは長期金利の動きはどうでしょうか?こちらでも原油・商品相場観が影響を与えていると言えます。原油・商品相場の下落はインフレ率が低下する要因であり、長期金利の低下を促します。
そして最近のリスク回避の資金の流れの中で、債券買いは利回り低下の動きがあることから、安全資産として見直されているのではないかと考えます。
下記グラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)は10年米国債の1月からの利回りの推移を示しています。年初は3%へ利回り上昇一直線でした。
年後半は3.25%をつける場面もありましたが、米中貿易摩擦、原油・商品相場の下落を反映、そしてリスク回避の米国債買いの動きから、3%前後で推移しています。筆者の今年前半の予想とは異なり、シナリオ修正を迫られています。来年は素直に利回り上昇とは行かない金融市場環境が続きそうです。
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