ニュータウンに関する話題だと、最近は開発から40年~50年近く経った地域などで、住民の高齢化が進み、商店街も撤退し、活気がなくなりつつあるというケースを数多く聞く。 その一方で、そうした大規模団地の二の舞は避けようと、計画的な街づくりを進め、開発から既に45年以上経っていながら、住民の高齢化率が3割を切るというニュータウンを紹介。
千葉県佐倉市にある「ユーカリが丘」という街。
不動産業者の「山万」が手掛けているもので、文化放送のある港区浜松町から、都営地下鉄と京成電鉄を乗り継いで1時間ほどのところにあるニュータウン。
京成電鉄のユーカリが丘駅に降り立つと、眼前に三棟の超高層マンション、ホテルなどに加えて、山万が運行する新都市交通の駅が見えてくる。
鉄道会社が沿線の不動産事業を手掛けるケースは珍しいものではないが、山万という不動産会社がなぜ、鉄道事業を手掛けるようになったのか。
そこには、どんな苦労があったのか。先ず、この点から嶋田社長に聞いてみた。
環境を整えるために…ド素人が鉄道を運行!?
「宅地を提供するに当たって、最寄りの駅から歩いて10分以内に自宅に着けるという環境を整えるために、分譲地を循環して走る鉄道の運行を考えました。
昭和45年ごろに計画したもので、当時は公害問題が世間を騒がせていた時期でもあり、環境に優しい鉄道にしようと思い、ゴムタイヤで走り、排気ガスも出さない新交通システムに決めました。
ただ、当時の運輸省に認可の申請をしたところ、ド素人が電車を走らせるなど、何を考えているのかと机を叩いて怒られました。結局、当時の国鉄から職員に来てもらって指導を受けながら、鉄道を走らせて、現在は、全て山万の社員だけで、分譲地内を周回する鉄道の運行に当たっています」
販売戸数を抑えて人口のバランスを保つ
山万の不動産事業には、自前の鉄道運行だけにとどまらず、ユニークな取り組みが色々とある。その代表的なものが、住宅を分譲する戸数を年間200戸に抑える計画的な分譲だ。
売れる物件があるなら、一気に販売するという方法を採った方が、経営的にはメリットがありそうだが、敢えて年間200戸しか分譲しないという手法を、なぜ選んだのか。
「住宅を購入する年齢層は20代から30代。手持ちの物件を一度に売ってしまうと、その時は儲かるかもしれないが、30年から40年も経つと、入居者が全員高齢化し、街全体の高齢化が一気に進んでしまいます。
年間200戸に販売戸数を抑え、時間をかけて分譲することによって、街の人口構成が若年層から高齢者まで、バランスよく保たれるようになります。住宅は一生の買い物であり、理想的な街を作ろうと考えています」
「そうした理想的な街を作るために、定期的にすべての住民を対象にしたアンケートを行っています。今、この街に何が必要か、困りごとは何か、といった内容を記入してもらうアンケートで、その中から必要なことを新たに手掛けたり、改善を図ったりしています。
それ以外に、毎日3人の社員が街の中を回り、住民の声を聞いています。街の困りごとは、行政に相談するより、山万の社員に相談した方が早いと言われるのも、そうした日々の活動の結果ではないかと思っています。
ただ、そうした取り組みを積み重ねていくと、山万の手掛ける仕事が際限なく増えていってしまうので、行政にお願いする部分、不動産業者の山万が担うべき部分の仕分けについて、社長である私自身が悩んでいるところです」
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