今年最大のリスクイベントであった米中間選挙が行われ、結果が出ました。正直申しまして、予想の範囲内、リスクを大きく刺激することなく消化したとの印象です。 無難に通過したことで、特に経済・金融市場では次のテーマへと移行してゆくことになります。
米中間選挙を間近で見て
中間選挙を振り返ってみましょう。共和党を率いるトランプ大統領は、米国民の中でも特に中間所得層、白人層といった保守岩盤支持層の票固めに全精力を注ぎ込んだように思います。
ちょうど中米からの移民キャラバンがメキシコを通過中、アメリカを目指していると報道されていました。これはトランプ大統領には絶好の選挙材料となりました。
イスラム系のテロリストが紛れ込んでいるのではとの不安感を煽り、米国国境に壁構築、米軍の国境への派遣、そして移民阻止に向けた措置を公約し、岩盤支持層の不安を煽る選挙手法に徹していました。
筆者は中間選挙までの最後の1週間のトランプ大統領の選挙応援演説をライブで聞いていました。
移民阻止、中国、日本などの貿易赤字を放置してきたオバマ前大統領の政策を痛烈に批判。最後に、共和党候補への投票呼びかけ、そして「Make America Great Again!」と呼びかける。そして聴衆は「USA」コールを繰り返す。
シンプルで非常に効果的な応援演説であったと思います。自身の弱点は一切発言しません。
反対に、民主党は、オバマ前大統領が全面的に出てくる人材難を露呈しました。女性候補を多数擁立し、ヒスパニック候補、アフリカ系候補、そしてイスラム系候補など様々な立場の候補を前面に立て、選挙戦を戦いました。
良い文言で言えばリベラル層の掘り起こし、悪い文言で言えば、弱者、貧者を取り込む選挙戦に出たようです。米国は分断化がますます進む社会になるのではと、筆者は憂慮します。国名に記されているUnitedとの文言の本質を今後問うことになりそうです。
選挙結果は、上院が共和党:51、民主党:46と共和党が過半数と、3分の1のみの改選では変化がありませんでした。そして下院が、共和党:199、民主党:225となっており、民主党が過半数を奪還しています。(未定の票が若干あるようです。)
これはメディアの事前の予想通りの結果であったようです。トランプ大統領にとっては、2020年大統領選挙の前哨戦との位置づけであったように思います。
上院でテキサス州を確保、ラストベルト(錆びついた一帯)であるオハイオ州、インディアナ州、ペンシルバニア州の下院で議席を確保したことは大きいと報道されていました。トランプ大統領は、今回の中間選挙を「大勝利」と表現し、下院の民主党過半数奪回を意に介していないようです。
2020年の大統領選挙では大いに勝てるのではとの目算がトランプ大統領の頭の中には描き切れたのではないかと思います。筆者は政治評論家ではないので、このあたりの論述にとどめておきます。
次のページ下院の敗北と「大勝利」宣言
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26