文化放送「The News Masters TOKYO」マスターズインタビュー。 今回のお相手は、行動生態学・社会生物学研究者で九州大学の「持続可能な社会のための決断科学センター」准教授・村上貴弘さん。 ハキリアリというアマゾンのアリを研究する村上さん、アリ柄のTシャツにリュックというスタイルで登場。 博士というより、探検家のようだが、ジャングルでアリに噛まれつつ、巣穴を掘るフィールドワークの猛者だと思えばうなずける。 パーソナリティのタケ小山も同じアウトドア派、旧知のような打ち解けた雰囲気で話が始まった。
農業をするアリ「ハキリアリ」の女王は、一度の交尾で生涯に2億の卵を産む
昆虫好きなら、図鑑などで見たことがあるかもしれない。
切った葉を運ぶアリの道をたどると巣が見つかる。巣穴を掘ると白いキノコ畑が…。村上さんは中米のジャングルで巣穴を堀り、アリの巣やキノコ畑を収集して、研究のために飼育している。
日本では、他に多摩動物公園の昆虫園でも見ることができるそうだ。
「ハキリアリの巣には100万個体の働きアリがいて、中心は一匹の女王アリです。巣は大きいもので10メートル×10メートル×5メートルくらいあります。巣の中には、数千個の畑があって、巣は20年くらいもつんですが、その間に3.5トンくらいの大量のキノコを栽培します。
女王アリの寿命も20年くらい、カナブンくらいのサイズです。一生に一度複数のオスと交尾をして、生涯でおよそ2億個の卵を産みます。大量の精子を体内に常温保存し、小出しにして子どもを産み続けるんです。
ハキリアリの食べ物はキノコなんですが、食べるのは女王と幼虫がほとんど。働きアリは3か月で死んでしまいます。そんな超ブラック企業みたいな社会で、変わらずに5000万年も生き続けている不思議な昆虫なんですよ」
20年も子どもを産み続ける女王アリは、最初から特別なのか?タケは興味を惹かれる。
「いい質問ですね、実は女王を決める遺伝子などは、発見されていません。どの幼虫が女王になるかは、働きアリが与えるキノコの量でコントロールしているようですが、決め手はよくわかりません。働きアリも10種類ほどいて、役割で大きさや形が違うのですが、幼虫の時に与えるキノコの量で変わってくるらしい...ことはわかっています」
興味深い研究対象ではあるが、南米では農業害虫で、オレンジや葉物野菜、コーヒーの葉に被害があり、膨大な予算を割いて駆除しなくてはならない大問題なのだ。
ところで、そのキノコはどんな味なのか?タケが気になって聞いてみると…。
「まずいんですよ(笑)。食べてみたんですが、かび臭くて。おいしかったらよかったですね。ちなみに女王アリはピーナッツのような味で、食べられます。多産の象徴で縁起がいいので、引き出物などに贈られるようですね。」
中南米ではハキリアリは悪者ですが、研究者としては、研究を平和的な駆除に還元したいですね。ハキリアリはサクラが嫌いなので、サクラに含まれる『クマリン』という物質を畑にまくなど、農薬を使わない方法を提案するとか、考えていきたいと思っています」
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