文化放送The News Masters TOKYO「マスターズインタビュー」。 今回のインタビューのお相手は、元プロ野球選手で野球解説者・指導者の桑田真澄さん。 PL学園の投手として5季連続で甲子園に出場し、優勝2度、準優勝2度を成し遂げ、甲子園通算20勝は戦後最多。 スポーツをする子どもを一人の選手として認めて指導する「プレイヤーズ・ファースト」という考え方が昨今注目されている。 タケ小山のインタビューは、「プレイヤーズ・ファースト」が野球界全体の発展につながると説く桑田さんの体験談から始まった。
『野球道』の教えとはなにか?
『野球道』をテーマした桑田さんがどのような研究をしたのか、フィールドワークから聞いた。
「学童野球、学生野球、女子野球、ソフトボール、社会人野球、プロ野球独立リーグなど各ステージの野球場に足を運んで、現状を知ることから始めた。そうすると問題山積であることが再確認できた。
これを改善しないと野球界は良くならないと実感した。なぜなら、プロ野球選手の供給源はアマチュア野球。特に学童・学生野球の環境を整えて育てないと、プロ野球に良い選手があがってこないから」と自説を語り、戦前・戦後の野球界に大きな影響を残した人物の名前を挙げた。
「早稲田大学の初代野球部監督・飛田穂州がその人。『野球道』を説き、"一球入魂"や"千本ノック"という言葉の生みの親。飛田さんがどういう指導をしていたのか興味があり調べると、学生に罵声を浴びせたことはないらしい。千本ノックも体調によっては本数を変えていたという。
一番感動したのは"練習が終わったらさっさと帰りなさい"と学生を諭して、学生の本分である勉強や、友達と遊ぶ時間も大切で、野球だけの人間ではだめで、模範学生になるのが本当の野球選手だと説いていた」という。
「まさに桑田さんがPL学園で提案したことと似てますね」とタケが問うと?
「野球選手にとって勉強は天才や秀才でなくても良いんです。でもグラウンドでは諦めるな、努力しろ、助け合え、と教わる。その一方で、グランドを離れると野球選手の欠点は何もしないこと。
折角いいことを教わったのだから、授業にも食らいつかないといけないし、人生にも食らいついていくんです。失敗しても起き上って、目標に向かって挑戦していくのが本当の野球選手、スポーツマンなんですよ」
『野球道』の再定義の必要性とは?
桑田さんは、日本の野球界の長所も短所も『野球道』という価値観が発端にあると考えるに至り、欠点だけを問題視するのではなく『野球道』の考え方を今の時代に合せて「再定義」しようと考えた。
『野球道』を最初に説いた飛田穂州は、新聞社の野球解説者に転じてからは「練習量の重視・精神の鍛練・絶対服従」を説き、早大監督時代の哲学とは異なる価値観で野球を論じた。
何故か?そこには「戦争」が忍び寄る時代背景があった。
飛田は「野球を守るため」に有用論を主張した。
戦後、野球を取り巻く環境は変わったはずなのに、復員した軍人が指導者となり長時間練習や体罰など、旧態依然とした悪しき伝統だけが残ってしまった。
「誤解された野球道」の価値観が現在の野球界にも浸透している。この是正が必要と説く桑田さん。
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