ロバート・カッツが半世紀以上も前にその重要性を指摘したコンセプチュアルスキル。このシリーズは、物事の本質をとらえる抽象化・概念化の思考をどうみずからの仕事や事業、キャリアに生かすかを考えていきます。
◆キャリアという作品を彫り出す
ハルバースタムは、仕事をしていくなかで何を望むべきかを“学んでいく”と表現しましたが、私はもっと突っ込んで、「働くこと(仕事)とは、何を望むべきかを“彫刻していく”営みである」と表現したいと思います。
人間は望むべきものを学ぶだけでは満足せず、それを形にせずにはおられない動物だからです。したがって、日々の大小の仕事は、いわば自分の望むべきものを一刀一刀彫っていく作業ともいえます。最初は自分でも何を彫っているのかはわかりません。でも5年10年と経っていくうちに、じょじょに自分の彫るべきものが見えてきます。
ミケランジェロは、石の塊を前に、最初から彫るべきものの姿を完全に頭に描いたわけではありません。一刀一刀を石に入れながら、イメージを探していったわけです。彫ろうとするものを知るには、彫り続けなくてはならない。そして彫りあがってみて、結果的に「あぁ、自分が彫りたかったものはこれだったのか」と確かめることができる。キャリア形成もたぶんそういうことではないでしょうか。
その観点で言えば、仕事観Xでいく人は永久に自分の彫刻物をこしらえることはないでしょう。お金を得て、それで交換できるものをたくさん所有した・消費した。それで幸福だったとは言えても、何かを創造して遺したとは言えない人生の使い方だからです(ただし、生きていくという営みは、そうした物質的な所有・消費によって支えられる側面は否定できませんし、そこに喜びがあるのも事実です)。
いまの仕事がつまらない、やらされ感がある、労役的であると思っている人は、1番めの仕事観Xに傾きがちになります。仕事は我慢であり、ストレスであり、その憂さ晴らしにせめて何かいい物を買いたい、何か楽しい余暇を過ごしたい。そのためにはお金がいる。と、そんな心理回路に陥るからでしょう。人生の喜びの見出し先は働くことにはなく、お金と交換して得られる物や余暇に向いていく。
逆に、仕事自体が面白い、仕事を通して何か社会に貢献していきたいというような想いを持っている人は、2番めの仕事観Yに近さを感じます。
平成ニッポンの世に働く私たちは、XとY、どちらの仕事観を主導にすることもできます。さて、あなたはどちらの仕事観を主導にして働いていくでしょうか?
◆コンセプチュアル思考によるモデル図の究極は「マンダラ」
さて、名言を図にする演習はどうだったでしょう。このように、「コンセプチュアル思考」は概念や本質をモデル図にする力を問います。
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仕事・事業に新しい概念の光を入れる『実践コンセプチュアルスキル』
2018.01.08
2018.02.02
2018.03.11
2018.08.20
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。