今年(2018年)6月19日、フリーマーケットアプリ大手のメルカリが、東京証券取引所の新興市場「マザーズ」に上場。 証券業界では、非上場でも推定企業価値10億ドル(約1100億円)を超える有望ベンチャーを「ユニコーン」と呼ぶが、日本でのユニコーン企業の上場はメルカリが初となる。想定企業価値1400億円超という同社の将来性に多くの投資家が注目し、時価総額は7172億万円と今年最大の上場となった。 これに続いて翌7月10日には、美容・健康機器の企画開発を手がけるMTG(想定企業価値2000億円超)もマザーズ上場を果たし、証券業界では市場活性化への期待がますます高まっている。今年に入ってユニコーン企業の大型上場が相次ぐ中、後に続く有望ベンチャーをいかに育成・創出していくかが、日本経済を浮揚させる大きなカギともなっているようだ。
日本でも少しずつ育ち始めている「ユニコーン予備軍」
今回、メルカリとMTGが上場したことで、いま日本に残るユニコーン企業は「プリファード・ネットワークス(AI開発/東京都)」1社になったとみられている。一方で海外に目を向けると、中国や米国には60~100社以上のユニコーン企業が存在し、規模が100億ドル(1兆1000億円)を超える巨大ユニコーンも少なくない。
大企業に偏重した産業構造や、挑戦・失敗が許容されにくい社会風土、スタートアップに長期投資する機関投資家が少ないなど、日本でユニコーンとなるベンチャーが育ちにくい理由はいくつかある。それでも、次なるユニコーンの予備軍は少しずつ芽を出し始めているようだ。
ジャパンベンチャーリサーチによると、2018年の国内スタートアップ投資額は前年の1.5倍のペースで伸びており、ベンチャーキャピタルや大企業から大型の資金調達を実施して、ここ1~2年で企業価値が数百億円に達した企業も多いという。また、トヨタをはじめとする大企業も、独創的な次世代技術を求めてベンチャーとの協業や出資に乗り出すなど、日本でも産業構造の転換が進む兆しが出てきている。
国のベンチャー支援プログラム「J-Startup」がスタート
次なるユニコーンや有力ベンチャーの創出に向けて国も動き始めている。
経済産業省は今年6月より、JETRO(日本貿易振興機構)、NEDO(新エネルギー・産業技術綜合開発機構)と共同運営するベンチャー支援プログラム「J-Startup(ジェー・スタートアップ)」を始動。まずは、起業間もないスタートアップ約1万社の中から、業界の専門家・有識者らが推薦した92社を「J-Startup 企業」として選定し、技術開発や海外展開、資金調達をサポートする。「えこひいきで育てる」(世耕弘成経産相)ことで、ユニコーンや上場ベンチャーを2023年までに20社創出する計画だという。
ここ近年、フランスや韓国、シンガポール、イスラエルなど、国が有力ベンチャーを育成する動きは世界でも広がっている。大企業依存の国内経済が限界を迎えつつある今、日本も立ち止まっている余裕はない。そうした中、今回始動したJ-Startupのプログラムによって、日本の産業界を担う「金の卵」が育つのかどうか……今後の動向に期待をもって注目していきたい。
※参考/朝日新聞、日本経済新聞、経済産業省HP
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。
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