お酒の販売・配達でおなじみ「なんでも酒やカクヤス」を運営する株式会社カクヤス代表取締役社長・佐藤順一さん。 売り手の都合を全て排除し『1本から売る』ことをはじめ、会社を大きくしてきた社長の佐藤さんに、「The News Masters TOKYO」マスターズインタビューのパーソナリティーであるタケ小山が、これまでの失敗談やポリシーについて聞く。
最大リスクを確保する
商売をやるうえで順風満帆ということはあまりない。
何事にも通じるであろう「苦境に立たされた時の解決方法とは?」というタケの質問に対して佐藤さんははっきりと自信をもって回答した。
「『最大リスクを確保する』ということ。もしかしたら10億位の損が出るかもしれない。その場合、まず10億円を確保する。
それが6億で済めば、4億円儲かったではないか!と。最大リスクを確保して、取り戻した分はおまけという発想に持っていく」
何故うまくいったのか?その答えは「たまたまついていただけ」だという佐藤さん。
更に佐藤さんは、「ハイボールが流行り、ハイボールが売れるとどうなるか?ビールが売れなくなる。ビールが売れないでハイボールが売れるということは、氷の消費量が圧倒的に増える。製氷機にはスペックがあり、それをオーバーすると氷が絶対に足りなくなる。
居酒屋に聞き込みをしたら、店員さんも夏場のピークはコンビニに走るんです」と話す。
「これは絶対にビジネスチャンスだと考え、全店舗にアイスストッカーを入れ、保冷バッグも装備した。
しかし、全く売れず。
その理由は...氷が足りなくなるのは夜の10時過ぎ。『カクヤス』は10時に閉店だった!」という失敗談まで笑いながら語ってくれた。
「たまたまついていただけ」とは言うものの、何かを仕掛けているからこそ、結果がついてくる。タケは佐藤さんの言葉の裏にある確かな自信を感じ取った。
ビジネスにすぐ使える社長語録
佐藤さんの「座右の銘」とは…。
「『中華料理の円卓』。8人位で円卓を囲んでいたとする。社長がいて部長がいて、普通は『社長からどうぞ』と言われる。
いやいや俺はいいから先に取って、と言って、ぐるっとひと回りしてくると、だいたい最後に2人分が残っている。
2人分取っても誰にも文句は言われない。ところが、最初に2人分を取ると『社長はがめつい』になる。
つまり、様々な制約を取りのぞいて、まず相手の要望に応える。最後にそろばんを合わせるのはこちらの知恵。物事は全てそういうこと」と、佐藤さんは語った。
これには「なるほど、今日から使える!」と、タケも妙に納得した様子を見せた。
「カクヤス」という会社に根付いた風土
「『カクヤス』という会社を一言で言うと?」と、タケ小山が質問すると、「仲間がいっぱいいる会社」と、即答した佐藤さん。
別の会社からカクヤスに入社してきたIT責任者の経験談。
「ある時、メインシステムがダウンしてしまった。受注の入力もできず、非常に困った。前の会社だったら叱責されていたところ。
しかし、カクヤスでは、コンピューターが止まった途端に、コールセンターに皆が勝手に集まってきて電話を取り出す。お客様に迷惑はかけられない、電話でメモすることはできる、と」
その様子にIT責任者は大変驚いたという。
また、過去に人事部長をやっていた人がセミナーで体験した話も。
「『一番嬉しかったことは何か?』と問われ、元人事部長は『同期より先に出世したことが一番嬉しかった』と書いた。
ところが、『カクヤス』の社員は、『こんなサービスをしたらお客様に喜んでもらえた』『こんなことをしたら上司に評価された』など、仕事のことばかり」だという。
皆で率先してやる。そういう集団であり続けたい、と佐藤さんは話した。
「物事がうまくいく時は3つの要素がある。
1つは、自分が本当にやりたいという気持ちがあるかどうか。もう1つは、その能力や資源が、自分ないし自分の会社にあるかどうか。
あと1つは、マーケットがそのニーズにあるかどうか。やりたい気持ちと、やるべきかと、やることができるだけの資源があるか。
『たい、べき、できる』の3つの要素があって、物事はうまくいく。
その中でも、3つの要素に順番をつけるならば、『たい』である。大きな『たい』の会社になりたい。
客の要望、期待にはなんでも応え『たい』。全てはここ。」そう熱く語ってくれた佐藤さん。
ブレない芯の強さを持っている、成功者ならではの話だった。
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