無料通信アプリ大手のLINEは今年(2018年)に入り、モバイル決済・送金サービス「LINEペイ」に続く金融事業の強化策を次々と打ち出している。 この1月にはLINE上でさまざまなフィンテックサービスを提供する金融子会社「LINEフィナンシャル」を設立し、仮想通貨交換業やクレジット事業への参入検討を表明。さらに、業界大手の「損保ジャパン日本興亜」「野村ホールディングス」との業務提携により、今年中にもLINEアプリを使った保険・金融商品の販売サービスを開始・拡大していくという。 金融事業を新たな収益源としたいLINEと、若者の保険離れを懸念する損保ジャパン日本興亜、若い資産形成層の取り込みを狙う野村ホールディングス……、それぞれの思惑が一致したLINE・各社がタッグを組むことで、いまフィンテック市場に新たなムーブメントを起こそうとしている。
スマホ特化型保険サービスの構築・提供をめざす
今年4月、LINEフィナンシャルは損保ジャパン日本興亜と業務提携を締結し、損保ジャパン日本興亜が手がける保険商品の販売を2018年中に開始すると発表。LINEアプリのメニューを使い、商品選びから加入手続き、契約締結、保険料・保険金の支払いまでスマホで完結できるようにする。
若者への販路拡大を狙う損保ジャパン日本興亜では、日常的に使うLINEアプリの画面上であれば保険に関心のない若年層にもリーチでき、加入や手続きの垣根も低くなると期待を寄せている。
さらに両社では、AI(人工知能)を使った保険相談の自動対応サービスや、LINEの消費行動データを活用した独自の保険商品の開発なども検討しており、コミュニケーションとInsurTech(Insurance+Technology)を融合した、新たなスマホ特化型保険サービスの構築・提供を目指していくという。
また、同事業では保険商品の販売だけでなく、事故受け付けなど加入者のトラブル対応にもLINEを活用。スマホのチャット画面で事故の写真や領収書が送れるほか、担当者とのやりとりなどもチャットで即時に対応する。
その第一弾として損保ジャパン日本興亜ではこの6月、海外旅行保険の一部商品と都内一部拠点の自動車・火災・傷害保険を対象に、LINEで事故受け付けから保険金請求まで対応するトライアルサービスを開始。9月までのトライアル結果をふまえて、他商品や全国での本格展開を検討していくという。
Messenger mobile phone user interface. Screen app and speech bubble with keyboard. Vector illustration
資産形成層のLINEユーザーに証券投資の浸透を狙う
一方、証券ビジネスを中心とした金融事業で、LINEフィナンシャルと業務提携するのが野村ホールディングスだ。両社は今年6月、LINEユーザーに投資サービスを提供する合弁会社「LINE証券」を設立。株式・投資信託の売買仲介やAIを使った投資相談などのサービスを、LINEのアプリ上で2018年中に展開する予定だという。
若年層への証券投資の浸透を狙う野村ホールディングスにとって、ユーザーの約75%が50歳未満の資産形成層であるLINEは格好の窓口といえるだろう。日本証券業協会(2016年調査)によると、国内の個人投資家は60歳以上のシニア層が過半数(56%)を占めており、40歳未満は1割にも満たない(8%)のが現状となっている。そうした中、若年層にとって身近なLINE経由での投資手段が広がれば、30~40歳代の資産形成層を取り込むうえで大きなアドバンテージになるというわけだ。
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