死刑囚たちが「オウムの真相を語る」必要がない理由

2018.07.09

組織・人材

死刑囚たちが「オウムの真相を語る」必要がない理由

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

未曽有のテロ事件となった地下鉄サリン事件や、一般人をも暗殺をたくらんだ凶悪事件の首謀者だったオウム真理教教祖と最高幹部の死刑執行について、「本人の口から真相を語らせるべき」という意見があります。しかし私は反対です。

麻原教祖の超能力でもなんでもない、違法なトリックで犯罪を犯す側にされてしまっただけであり、思考能力を奪われた人間の当時の判断基準を聞くことに意味はあるのでしょうか。真実や本心がどうだったかより、誰でも洗脳手法を使って改造されてしまうメカニズムを悪用した犯罪だったことをあらためて認識し続けることの方がはるかに重要だと思います。

3.科学的に理解すべき超能力
犯罪者はこれからもずっと現れます。自分勝手な理屈で人をあやめたり、だましたりする人間は永遠に現れるでしょう。

真実の究明より大切なのは、そうした今後も現れる犯罪者とどう向き合うかです。一流大学を出ていても、洗脳やマインドコトロールの存在を知らず、それらを神秘体験と理解してしまうような愚かなことをしないようにする教育の方が重要ではないでしょうか。

今現在も後継団体の信者勧誘は行われているといいます。メディアや有名人も動員して一気に膨れ上がり、破局を迎えたオウム教団を育ててしまった社会のメカニズムと、超能力でも何でもない単なるトリックで、人は簡単に思考能力を奪われてしまうという実態。そしてそれは心の弱さなど関係ない身体的反応であること。

何より大切なことは自ら考えることを捨ててしまえば、犯罪に手を染めた死刑囚たちと同じ行為を、私たちは誰でも犯す可能性を持っているのです。エセ科学を無批判に信じてしまう思考こそ、オウムを育てた土壌となったことを、永遠に語り継いでいくことの方が、真実の追求よりずっと重要だと思います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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