日本製造業の危機

2018.07.04

経営・マネジメント

日本製造業の危機

野町 直弘
調達購買コンサルタント

日本の製造業の危機的な話を最近立て続けに感じました。今回はその件について考えてみたいと思います。

聞いてみると団塊世代が本当に引退しだしたのは最近だそうです。その上彼らののノウハウを継承する若手人材が育っていないとのこと。考えてみれば日本の製造業は以前は毎年現場を支える人材を一定人数定期的に採用してきました。
しかしバブル崩壊以降、製造現場を担う人材を(人手不足やコスト削減のため)社外に委託するようになってきました。これもノウハウ継承が難しくなった一つの要因と考えられます。

一方で中国を始めとするアジア企業は現場で働く人材も若い人材が多く、グローバルでの競争で日本企業は今までは品質で競争優位に立てたがこれからは分らないと、このバイヤーは危惧されていました。日本企業はノウハウの継承ができていないし、気がついたらノウハウを持っている人もいなくなっていた、という状況なのです。

このようにモノづくりの現場が弱くなるとその影響は調達購買などの支援部隊にも及びます。具体的には業務の守備範囲がどんどんと広がっているとのこと。在庫管理、発注管理、納期管理、品質管理、棚卸、などの、所謂パーチェシング系業務や、調達リスク管理やCSR関連などの業務になります。一時期契約業務と購買業務を役割分担し、契約業務に力を入れるべき、という人材配置が行われてきましたが、現状その逆に舵取りをせざるを得ない状況になっているようです。

しかしモノづくりの支援部隊の調達購買部門も若手の不足、ノウハウの継承者がいない、というモノづくりの現場同様の問題を抱えています。今はどうにかこうにか回せていても、そのうち疲弊化していく可能性が高い状況です。

サプライヤの供給力不足とモノづくりの現場の弱体化、この2つの課題に共通するのは「モノづくり現場の軽視」かもしれません。私が大学を卒業して自動車会社に入社して最初に先輩から教えられたことは「工場の現場が一番多くボーナスをもらうのがあたり前」ということです。この頃はまだ日本製造業全体で現場を重視していた時代だったと言えます。

モノづくりの現場を重視し重点的に人材配置、人材育成、ノウハウ継承をしていくことが必須であり、今がその最後のチャンスと言えるでしょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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