近年「性的少数者」、あるいは性的少数者を指す言葉「LGBT」をよく聞くようになりました。 と同時に、そうした性的少数者をターゲットにした商品やサービス、いわゆる「LGBTビジネス」も注目を集めるようになっています。 意識の高い性的少数者たちは消費意欲が旺盛で、質の高い生活用品を求め、海外旅行にも積極的に出かける……というヨミから、2010年代以降、名のある大企業も性的少数者をターゲットにしたビジネスに参入。一部では、日本だけで約6兆円もの市場規模が期待されており、世界全体でも100兆円超えが期待される「LGBTビジネス」。 ── はたして、LGBTビジネスは不況を打開する巨大市場を形成できるでしょうか。それとも絵に描いた餅なのでしょうか。LGBTビジネスの未来を探っていきましょう。
国内の性的少数者は、全体の8%ほど?
まずは言葉のおさらいから。LGBTとは、
L……レズビアン(女性同性愛者)
G……ゲイ(男性同性愛者)
B……バイセクシャル(両性愛者)
T……トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)
の英語の頭文字をとった言葉です。
LGBTという言葉は性的少数者の総称として使われることも多いのですが、じつは性的少数者を限定的に指す言葉。性的少数者にはLGBT以外のカテゴリーである「身体的に男女の区別がつきにくい人」「自分の性別や性的志向に確信がもてない人など」もあるからです。ですから「性的少数者=LGBT」ではないということは、最初に理解しておきましょう。
2016年に博報堂DYグループの株式会社LGBT総合研究所が実施した、LGBTに関する意識調査によると、LGBTに該当する人は全体の約5.9%(レズビアン1.70%、ゲイ1.94%、バイセクシャル1.74%、トランスジェンダー0.47%)とされています。また、LGBTにあてはまらない性的少数者に該当する人は約 2.1%とされ、合計すると全体で約8%にのぼります。
一方、2015年4月に電通ダイバーシティ・ラボが実施した「LGBT調査2015」によれば、日本の人口の7.6%がLGBTに相当するとされています。いずれにせよ、15人に一人程度はセクシャルマイノリティと考えられそうです。
東京都世田谷区や渋谷区などは同性同士でも公的カップルと認めるようになっていますし、企業でも同性のパートナーを慶弔休暇や介護の対象にする制度を導入するところも増えています。“少数者”とはいうものの、すでに見過ごすことができない存在感を示してきているわけです。
市場規模は世界で100兆円を超える勢い
では、そんな性的少数者を対象とした経済状況はどのようになっているでしょうか。前出の「LGBT調査2015」では、性的少数者をターゲットとした市場規模は、国内で5.94兆円になるとしています。ちなみにアメリカでは約77兆円、イギリスでは約7兆円とされ、世界では100兆円を超える市場を形成すると期待されているのです。
さまざまな消費が頭打ちになっている現代社会において、国内で約6兆円がこれまで手つかずの市場だったとすれば、その数字は大きな価値がありますが、果たしてどのような商品がLGBT層に売れるのでしょうか。
LGBT総合研究所が、ストレート層とLGBT層がどのような分野に支出しているかをまとめたのが下の表です。
いかがでしょうか。LGBT層の消費傾向として、海外・国内旅行、ペット関連商品やサービス、芸術鑑賞などの分野で高い消費支出傾向が見られることが分かります。他にも自宅での食費やアルコール、家具・インテリア、ファッションでも、ストレート層より多くの支出をしているようです。
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