2017年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比13.2%増のけっこうな伸び率と見える。 しかし、果たしてそうなのだろうか。
また、動画にしてもコミュニティにしても、無料プラットフォームが増加し、活用方法によっては、コスト面での不安がなくなるのも大きい。事業者的には、コストが下がるだけなら歓迎されないだろうが、コストがネックで実現できなかった企業や企業内個人にも開拓のチャンスは広がる。
ビッグデータが教育を変える?
教育のICT化で最もインパクトが大きそうなのが、個別カスタマイズ、教育コンテンツの自動生成などが可能になる、ビッグデータの活用だろう。
ある程度、デジタル化されたラーニングが進み、データが蓄積されれば、これまでのeラーニングとは大きな違いが出そうだ。
知識系のコンテンツはデジタル化しやすいうえに、AIによる判断も難しくないだろうから、受講者の回答レベルや内容に応じたコンテンツの生成やフォロープログラム管理、同じような課題を抱える人とのコミュニティへの誘導など、さまざまなことが可能になる。
さらに、受講時に生まれたナレッジを現場に生かせるように、ナレッジマネジメントとの連携が進めば、教育現場がイノベーションの場になることも夢ではない。
こうした点を考えれば、やはりポイントは、教育手段をどうするかということだけではなく、企業全体としての統合化されたデジタル化の推進が課題となりそうだ。
たとえば、eラーニングが普及している企業であっても、企業内のナレッジとeラーニングを管理するLMSが統合されている例を聞いたことはないし、せいぜい、集合研修などの受講記録と連動し、社員の研修受講管理が一元化されている程度だろう。
教育の現場でイノベーションを起こす
本来の教育目的は、研修や受講プログラムで得た知識やスキルを現場で生かすことなのだから、企業のバリューチェーンのなかですぐに活用できるように、経営者やマネージャーは、マーケティングや研究開発、組織づくりにおける情報のデジタル化を進め、教育現場との一体化を図るべきだろう。
現在、企業におけるビジネスの現場と教育現場が意識の乖離、あるいは信頼関係の欠如に陥っているという話をよく聞く。情報も共有されず、双方を管理できる人材もいないとしたら、それは当たり前のことだ。
eラーニングと言って、既存教育の置き換えをデジタルで行うという発想では、市場規模の拡大も起こらないだろうし、何より教育効果のアウトプットもたいして変わらないだろう。
大げさかもしれないが、EdTechの概念とは、EdTech自体がイノベーションであると同時に、教育の現場がイノベーションの場となるように、EdTechによってイノベーションを起こすという、新たなバリューチェーンの創出を意味するものであってほしいと願う。
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