「マーケティングは難しい」という人の多くは、フレームワークを知らない・正しく用いていないという場合が多い。そのため、当連載では、フレームワークを行う上で「陥りがちな落とし穴」を解説してきた。ここまで多くは「環境分析」のフレームワークを見直してきたが、今回は「戦略立案」の第一歩である「セグメンテーション」に進めてみよう。実はここがある意味、失敗するマーケティングの巣窟だったりする。
■結論から言う。そのマーケティングは失敗する!
「この商品のターゲットは20代の女性です!」などという言葉を聞いたら、まず、それは失敗すると思った方がいい。ターゲットの問題ではあるが、その手前の「セグメンテーションの本質」が理解されていないからだ。今回はセグメンテーションに対する世の中の誤った認識を修正していきたいと思う。
■環境分析の次はSTP
前回、連載第4回で「マーケティングは流れで読み解く」と述べたが、環境分析を行って、おおよその戦略の方向性が見えたら、「どんな顧客に・どのように(競合と差別化できる)魅力を示して行くのか」を考えることになる。これが、マーケティング全体の流れにおける「戦略立案」というパートの「ターゲティング」と「ポジショニング」である。
だが「どんな顧客に」と狙いを定めるには、その手前で「どんな顧客候補がいるのか?」を明らかにすることが欠かせない。それが「セグメンテーション」であり、「Segmentation・Targeting・Positioning」を略して「STP」などという。このSTPをしっかり検討することが、具体的な施策である4Pを設計する上で欠かせない。施策の成否は戦略であるSTPの精度にかかっていると言える。
■「セグメンテーション」とは何か?
Segmentationを日本語にすると「市場細分化」などという訳が付けられる。細分化するためには何らかの「軸」が必要になり、その最も典型的な例が、「性別」「年齢」といった属性だ。同じような「人口統計的変数」として、「家族数」「職業」「所得」・・・などがある。また、別の側面として「地理的変数」で見れば、「居住エリア」などがそれにあたり、他に「心理的・行動的変数」として、「ライフスタイル」「性格」や「購買特性」などもある。多くの場合、こうした様々な「切り口」で、「市場を切り分けていく=細分化」のがセグメンテーションだと思われている。「さて、性別は女で、年齢は20代後半から30代前半で、独身、都市部在住のオフィスワーカー。ライフスタイルは家庭的で性格は堅実志向・・・」などと、いくつもの切り口を重ねて詳細化していく場合もあるが、これがセグメンテーションの本質ではない。
■「グランドビッグマック」は誰がためにある?
日本マクドナルドが、4月6日に期間限定で発売した「グランドビッグマック」。売れすぎて販売休止となったが、肉の量が通常のビッグマックの1.3倍というそのガッツリバーガーを食べたのはどんな人だろうか。上記のセグメントの属性で考えれば、「若年層」「男性」という、いかにもガッツリ食べそうな人がイメージされるが、Googleの画像検索で「グランドビッグマック 食べた」というキーワードで検索してみると、男性は若者だけでなく、ちょっと三十路に入ったような人も見受けられる。また、男性のみならず、巨大バーガーを果敢に頬張る女性の画像も散見される。つまり、性別・年齢に関わらず、「グランドビッグマック」を食べている人は、「”心ゆくまでガッツリ食べたい“もしくは”SNSにアップしてネタにしたい“というニーズを持った人」であると言えるだろう。
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フレームワーク
2019.04.08
2022.02.19
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。