市場環境を分析する際に、「何のフレームワークを用いればよいか?」と悩むことがあるだろう。筆者のオススメとしては、まずは自分の得意なフレームワークで一度分析してみることだ。その結果、よくわからなかった所があれば、最も適したフレームワークを判断してもう一度分析をしてみるといい。 多少データの鮮度にバラツキはあるが、ここ数年で大きな岐路に立たされている「クリーニング業界」を例に考えてみよう。
まずは、「クリーニング業界」がどれくらい厳しい状況にあるのか、もしくは魅力があるのかというテーマで分析をしてみるとしよう。その場合、業界内の力関係を5つに分けて分析する「5つの力分析(Five forces analysis)」が最適だ。
クリーニング業界の現状がどのようになっているのかは、次のニュースにファクト情報が多数掲載されている。
<縮むクリーニング市場、ピークの6割減 高機能アイロンは商機>(2010年10月.17日のmsn産経ニュース)
<2009年に家庭で支出した衣類のクリーニング代は約8000円で、ピークの1992年と比べて約6割減ったことが、総務省の家計調査で分かった。クリーニング市場の規模は推計で約8200億円から約4300億円に縮小、事業者数も減っている>という状況であるという。これだけ読めば、一見して「オイシクない業界」であることがわかるが、その原因を分析してみよう。
記事には<家計調査によると、2人以上の世帯の09年のクリーニング代は、前年比8.1%減の8131円で、ピークの92年(1万9243円)から17年連続で減少>という記述がある。消費者の購買(利用)が大きく減少しているのである。
「5つの力分析」では、上記は「買い手の交渉力」という要素となる。基本的には消費者が業界内の企業(ブランド)に対してどの程度スイッチしやすく、価格などへの交渉や敏感さを持つかを表す。スイッチしやすければ、力は「強い」。買い先が限られているなら「弱い」。この場合は、そもそも需要がなくなり利用しなくなるので「強い」と解釈できる。
なくなった需要はどこへ行ったのか。この場合は、その業界の商品(サービス)を利用しなくても他で用に足りる存在がどれくらい強力かという「代替品の脅威」という要素となる。
記事では<長引く不況で節約志向が強まり、自分で洗濯する家庭が増えたことが主因。商機とみた家電メーカーは、高機能の洗濯機やアイロンを相次ぎ投入、売れ行きも好調><服装のカジュアル化や「形状記憶」シャツの普及も一因とみられる>とある。
クリーニングに準ずる仕上げができる洗濯機やアイロン、衣類。そもそも、きちっと仕上げなくていいカジュアル衣料やファストファッションに代表される使い捨て傾向が強力な代替品であることがわかる。
msn産経ニュースの記事からわかることは以上であるが、もう少しファクトを集めてみよう。だいぶ前の数字だが2006年のクリーニングの業界紙に以下のような記事がある。
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フレームワーク
2015.07.17
2019.04.08
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。