マーケティングの難しさを口にする人の話を聞くと、マーケティングの分析・立案に用いられるフレームワーク。それが誤用されているが故に、マーケティングを難しく感じている人も多い。そんな「間違いがちなフレームワークを総点検する」というこのシリーズ、第3回は「5F分析」だ。
3.業界定義は工夫し尽くす!
例えば自分が「ペットボトル飲料」の担当だったとしよう。単なる「ペットボトル」で戦うなら競合がゴッソリあることになる。その飲料が「特保」の認定を取っているなら、「特保飲料業界」になり、競合はかなり減る。(但し、前述の通り代替品としてダイエット食品などが登場する)。特保飲料はいくつかタイプがあるが、代表的なものは花王「ヘルシア緑茶」、サントリー「特茶」のような脂肪燃焼系と、サントリーの「黒烏龍茶」のような食事と一緒に摂取して脂分を体外に放出する系がある。別の切り口では、その特保飲料が炭酸だったりすると、「炭酸特保飲料業界」ということになり、競合が花王の「ヘルシアスパークリング」とキリンの「メッツコーラ」ぐらいになる。このようにできるだけ競合が少ない業界を見つける、またはいない業界を作り出すことが工夫のしどころだ。(但し、それが顧客=買い手にとって意味のある切り口であることが必須)。
このように5F分析においては、業界を定義どのように定義するかが大きな勝負のキモなのだが、実はこの部分が忘れられがちだったり、工夫がされてなかったりすることが多いのだ。
4.「顧客は誰か?」を考えて、「5つ」という数字に縛られないこと!
フレームワーク上級者の原則は「使いこなしにおいて改良・改造は自由にして可」とい
うことだ。この5つの力の「買い手」を顧客として捉えるなら、業態やビジネスモデルによってかなり異なる要素が混在することになる。直販をしている業界なら、買い手は素直にエンドユーザー=消費者だ。だが、多くのメーカーなら間に流通が入る。メーカーにとっては、第一の顧客は流通であり、いくら消費者ニーズを捉えたにウケそうな商品を作っても、流通が棚に並べてくれなければ消費者が手に取ることはできない。
その場合、流通のニーズや意向を明確にするなら、「5つの力」ではなく買い手を2つに分けて「6つの力」で考えた方がいい。
もっと極端な例でいうなら、例えばビールメーカーなどは流通→消費者という買い手の要素と平行して、料飲店も重要な顧客だ。料飲店において消費者はその店のビールの銘柄(メーカー)を選択の余地なしに無条件で飲むので、消費者に対する打ち手はほぼ無意味だ。そのため、例えばビールメーカーが流通→消費者というラインとは別に料飲店の影響力を小さくするために行っている施策として、比較的大手のチェーンには資本注入して自社ブランドのビールだけを置かせて固定化するという施策を取っていたりする。この場合、買い手が3つに分割されて「7つの力」で考えられていることになる。
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フレームワーク
2015.07.17
2019.04.08
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。