Brexit(英国のEU離脱)決定から1年以上が過ぎ、今年6月にはメイ首相が総選挙に打って出ましたが、与党保守党過半数割れとなり、政治が不安定ともささやかれています。 しかし、経済は堅調に推移していて、BOE(英中央銀行)は年内にも利上げに踏み切るのではとの観測が強まってきています。 そしてその観測の強まりと歩調を合わせて、ポンド高の相場となっています。順を追って解説して行きたいと思います。
英国の経済は堅調に推移しています。英国のGDP(国内総生産)第2四半期0.3%前期比、1.7%前年比となっています。第1四半期は0.2%前期比、2.0%前年比と、Brexitの心理的悪影響は出てきていないのではと推測されます。
実際にBrexitへの法整備などに2年の期間を要し、2019年3月にEUとの交渉期限が到来し、英国へのEU法適用が停止され、Brexitが開始されることになります。それまでは猶予期間と考えても良いのではないかと思います。
それまでに、EUとの関税率交渉をすることになります。また金融界ではEU単一免許のもとで、英国からEU向けの金融サービスが出来ていたのが、出来なくなります。日米など金融機関は欧州の大陸に拠点を新たに設ける作業を急いでいるようです。
投資環境が悪化することで、製造業でも英国離れが加速することも予想されます。しかし、当面は経済成長の大きな影響は及ぼさず、景気後退観測は薄れつつあると言えます。GDPの数字がそれを示しています。
具体的に中身を見てみましょう。下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、英国の製造業とサービス業のPMI(Purchasing Managers Index)を示しています。購買部担当者が現在の景気状態をどの様に見ているかの昨年8月からの統計です。Brexitが決定してからの推移を示しています。
特に製造業(Manufacturing PMI紫色)は直近8月:56.9と好調を維持しています。輸出依存体質が英国にも現れており、Brexit決定直後からのポンド安の流れが幸いしたのか、製造業の景況感は好調を維持しています。
しかし、今年4月頃からはポンド高で推移する傾向になり、今後の不安点と言えます。今後製造業で海外企業などが、英国から拠点を移す動きが出てくると、たちどころに景況感が悪化するという懸念が出てくると言えます。
サービス業(Services PMI 青色)については、53.2と去年の8月時点を比較するとほとんど変化がないと言えます。しかし、景気の分かれ目として意識される50を上回っています。どうしても、Brexitは心理的にはサービス部門の悪化懸念の方が大きく、全体的に見れば英国は良い景気状態を続けていると言えるのではないでしょうか。
それでは英国の物価水準はどのように推移しているのでしょうか見ましょう。下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は2007年から現在に至る消費者物価指数を示しています。
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