最近は欧米企業を中心にサステナビリティやCSR調達の観点からサプライヤリストを公開する企業が増えてきているようです。
このように特に欧米では「大企業が取引先も含むサプライチェーン全体のサステナビリティ(持続可能性)に対して責任を持つ」ことがもはや当たり前な世の中になってきているのです。
サプライヤリストの公開が必ずしもこのようなサステナビリティ、CSR調達に直結するとは言えませんが、サプライチェーンの透明性の確保と共に、サプライヤの囲い込みという目的も同時に考えられます。しかし日本企業ではこのような取組みは遅れていると言わざるを得ません。
一方で日本でこのようなサステナビリティ、CSR調達の取組みで進んでいる企業の代表はファーストリテイリングです。同社のHPでは「生産パートナー向けのコードオブコンダクト(CoC)」の内容として、
・児童労働の禁止
・強制労働の禁止
他11項目を決めていて、その遵守を呼びかけるだけでなく毎年モニタリングを行いその結果を掲載しています。具体的には労働環境モニタリングということで毎年取引先監査を行っており、2015年度は472工場を対象にモニタリングを実施しています。またE評価(即取引見直し)は2015年度には19件上げており、自社の問題についてもきちんと開示しているなどその姿勢は評価すべきでしょう。
また同社はカリフォルニア州サプライチェーンの透明性に関する法律についての遵守状況の記載や「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定」への加盟もしています。
このような取組みの多くが同社のWebサイトから発信されているのです。
日本企業の場合、実際に取引先のモニタリングや監査を行う企業は多くはありません。何故なら実際のモニタリングや監査にはたいへん大きな負荷やコストがかかるからです。
ファーストリテイリング社の場合、それを非常に大規模かつ継続的に実施し、尚且つ多くの情報を開示しています。そういう意味では日本企業を代表する先進的な事例と言えるでしょう。
日本企業はサステナビリティ、CSR調達に関しても欧米企業に比較して遅れてはいますが、この流れは逆戻りできない状況です。しかし現在はこのファーストリテイリング社でもサプライヤリストは公開していません。いずれ近い将来に日本企業でもサプライヤリストを公開する企業事例がでてくると考えられるでしょう。
先日の接待問題など、日本企業のCSR調達の基本となるコンプライアンスの欠如というサステナビリティやあCSR調達の最もプリミティブな姿勢が問題となりましたが、その記事を読んで思い出したのは私が以前勤務していたGEでの経験でした。GEという会社はコンプライアンス、インテグリティ、CSRに対してたいへん力を注いでいます。
毎年インテグリティに関するルールを全社員に配布し、サインして会社に提出します。また中途入社時のオリエンテーションでもコンプライアンス、インテグリティに関してはCEO自らが必ずオリエンテーションを行っていました。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。