前回まで5つのキーワード型調達購買改革の誤解について説明してきましたが、今回はそのまとめになります。
私はやはり集中購買、集中契約は進めるべきと考えます。集中購買はコスト削減効果だけを求めるものではないからです。例えばスキルの育成や集中化、それから社内統制面や業務コストの最適化、支出最適化の状態を保っておくには集中購買が望ましいから。そういう意味ではコスト削減効果が薄れてきたから集中購買やめましょうというのは乱暴な議論です。
いずれにしてもここに上げたようなキーワード型改革は既に限界にきています。これは今日現在は調達購買改革の初期段階ではなく、次の改革に向けての発展段階になってきているということでしょう。キーワード型改革はシンプルでわかりやすい。しかし、「競争化」=「コスト削減」の誤解でも取り上げましたが、「競争できないものを無理やり競争させてしまう」ようなリスクも内在しています。また繰り返しになりますが、キーワードの定義が曖昧でそれが誤解やミスコミュニケーションにつながるリスクもあります。また目的・ゴールと手段やツールを取り違えてしまうリスクも少なくありません。シンプルで推進力につながりやすいが、このようなリスクが内在することは理解しておく必要があります。
それでは今後はどのような改革が必要なのでしょうか。
ポイントは「層別化」と「考えられる組織」です。
これまでの誤解シリーズでも述べてきましたが、品目や品目群の市場構造や環境は重要であり、全ての品目を同じでように捉えるのではなく、層別化して捉え、どのように重点をおき効果的な改革をするか、という重点志向が求められます。
戦略的重要性とスイッチングコストの2軸で考えてみましょう。マトリクスを考えた場合戦略的な重要性が高くスイッチングコストが高い領域、これは例えばマイコンなどが当てはまります。こういう領域は複数社発注でリスクマネジメントしたい領域ですが、新しいサプライヤで全く同じものを作らせるには開発費用などの投資負担が大きくコスト的にあいません。このような品目群に対してどのような手法をとれば良いでしょうか。「競争化」?こういう品目は競争できないものを競争させてしまいトータルコストがかかりすぎてしまった、なんていうことにつながります。基本的な手法は関係性
強化、囲い込み戦略でしょう。リスクマネジメント手法としてはマルチファブ化や在庫を持つという手法が向いています。
戦略的な重要性が高いがスイッチングコストがあまり高くない領域は、例えば汎用半導体などがあてはまりますが、この領域は複数社発注でリスクマネジメントと同時に競わせていく領域です。
戦略的な重要性が低いがスイッチングコストが高い領域は、カスタマイズ品で例えば樹脂成形品やプレス板金などが代表的な品目として上げられるでしょう。この領域は例えば通常サプライヤが分散しているケースが多いのでサプライヤを集約することで設備稼働率を向上させコスト削減につなげやすい領域になるでしょう。気を付けなければならないのはサプライヤのスイッチングコストが高いため、集約を行うのは新規案件からとなります。
最後はスイッチングコストが低く尚且つ戦略的な重要性が低い領域です。ここは品目としては梱包材やケーブルなどが上げられますが、競争化が当てはまりやすく競争の結果サプライヤが集約されている、という領域です。
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調達購買改革を巡る誤解
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調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。