近ごろのドラマは、登場人物の心理描写にも心理学的なテーマが仕込まれているものも多くあります。 そして、心理描写だけでなく、心理学用語を交えて、会話がなされているドラマもちらほらあります。 その中でも、「陽性転移」と言う言葉をぽつぽつ聞くようになりました。 そんなわけで、今放映中の「ラヴソング」から取り上げてみます。
■ 福山雅治さんの「陽性転移」への反応は?
個人的に「テレビはドラマのためにある」と思っているくらいテレビで見る番組はドラマです。
ストーリーが「ちゃんと心理学の背景を抑えているな」と思うドラマは、結構深みがあって見応えがあるものが多いです。
そして、最近は、精神科医や臨床心理士が登場するドラマも、たびたび見かけるようになりました。
心理学の言葉と書きましたが、その中でも時々取り上げられている「陽性転移」と言う言葉をご存じでしょうか。
現在進行形は、「ラヴソング」(フジTV系 月9ドラマ)。
福山雅治さんが、臨床心理士、神代の役で、藤原さくらさん(役名もさくら)が、企業のメンタルケアで吃音の治療の相談者として登場します。
詳しくは省きますが、かつてミュージシャンとして活躍したことのある神代は、さくらの歌の才能を見抜き、ライブやデビューをサポートするのですが…
そして、さくらは神代にラヴしてしまう…。
さくらが神代に惹かれていくプロセスで、さくらが神代に言うこんな言葉がありました。(正確ではありません。ご了承ください )
「そんなに優しくすると陽性転移しちゃうぞ!」と言うさくらに、神代は「良く知っているじゃない。勉強したの?」
たぶん、さくらはシンプルに神代に「好きよ」と言いたかったのでしょう。でも、ちょっと屈折してそんな表現をしたのかもしれません。
このケースのように、クライアントがセラピストに恋愛感情をもってしまうような状況を「陽性転移」と言います。
好きになっちゃうということが「陽性」、
時にセラピストに逆切れして怒りをぶつけたり、敵意を見せたりするのが「陰性」転移です。
現れ方は真逆ですが、根っこは同じです。
感情の転移とは、過去にあった感情をセラピストに移している、そんな言葉です。
多く言われるのは、幼少期に満たされていない親からの感情をセラピストに満たしてもらうことを期待している、というのです。もちろん、無意識に。期待を裏切られると陰性に転じやすいです。
セラピーに携わる者は、クライアントが会った時、実像よりハレーションして見えているもの、だから多かれ少なかれ愛されやすい存在と言えます。その意味で、転移はおそらく陽性で表れやすいものです。
だから、恋愛感情のように思えても、本当は錯覚です。
神代は、さくらが「陽性転移」と言ったので「好きになっちゃうかも。でもそれってクライアントによくあることだよね」と屈折した表現で神代に告白しかけたことを気づいたのかもしれません。彼もその気持ちをあえて、陽性転移と受け取っておくことで、それまでの関係性を維持したわけです。
次のページ■ ドラマに「陽性転移」が使われているケースでは
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2015.07.17
2009.10.31
一般社団法人フラワーフォトセラピー協会 代表理事
こんにちは。内藤由貴子です。花の写真でストレスを作る感情を分析、心理診断を行い、さらにその解消まで行うフラワーフォトセラピーのセラピストです。INSIGHTNOWでは、異色な存在かもしれませんね。このセラピーの普及のため、一般社団法人フラワーフォトセラピー協会を設立、講師の養成、セラピストの紹介を行っています。自身、色を使うオーラソーマ®をはじめ、セラピストとして16年あまりのキャリアです。このINSIGHTNOWでは、こころをケアに役立つようなコラムを書かせていただきます。よろしくお願いいたします。