ALLIANCE(アライアンス)。主に国同士の同盟や企業間の提携を指す言葉です。2015年に発刊された『ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』は、そうした提携関係を、働く人と企業の関係に持ち込むことを説いています。シリコンバレーのハイテク新興企業コミュニティーで、どのように“働く人と企業のアライアンス”が成立しているのか、日本の労働社会にも参考になる本書のエッセンスを紹介します。
一方アライアンスでは、両者は対等です。企業は社員に向かって「当社の価値向上に力を貸してほしい。当社も、あなたの価値を向上させよう」と示し、社員は上司(企業)に向かって「私が成長し活躍できるように手を貸してください。私も企業が成長し活躍するための力になりましょう」と示す必要があります。
期間を区切ると、整合性を取りやすくなる
アライアンスのもう1つの特色は、「期間を区切る」ということです。期間を区切ったうえで、企業と社員が「〇年の間に、こんな仕事を担当する。こんな成果を挙げる」ということについて約束を交わすことを、本書では「コミットメント期間」と呼んでいます。
なぜ期間を区切る必要があるのでしょうか。その理由として本書は、企業の目標と価値観と、社員のキャリア目標と価値観との、整合性を取ることの難しさを挙げています。例えば、最終的には起業家になることをキャリア目標に掲げている社員がいるとします。その社員と企業が、10年以上といった長期にわたって目標や価値観の整合性を保つことは難しいでしょう。ですが3年という期間を区切って、起業家になった際に役立つ仕事を任せるようなコミットメント期間の設定は可能です。
このようなコミットメント期間の実行で、いったん互いに信頼関係を築けたなら、他社に移った後再び戻ってきたり、雇用以外の関係で仕事を依頼したりという展開も考えられるようになります。コミットメント期間の設定は短期間、1回限りとは限りません。本書ではさまざまな期間や内容のコミットメント期間を積み重ねることで、社員と上司、企業間の信頼が増していった、LinkedInでの事例も紹介されています。
社員の人脈が持つ知識や情報を活用する
企業と働く人の間にアライアンスが成立することをベースに、本書は社員に「ネットワーク情報収集力」を求め、企業に「卒業生ネットワーク」を活用することを提唱します。「ネットワーク情報収集力」とは、その人の人脈全体が持つ知識や情報のことです。個々の社員が持つ人的ネットワークの活用は、一般に公開されない隠れた情報へのアクセスを可能にしたり、それなしでは見過ごしたであろうチャンスに気づいたりといったことを、組織にもたらしてくれます。
企業と社員の間にアライアンスが成立していれば、社員のキャリアは社内に限定されません。自らの能力を高めるためにも情報収集や人脈づくりに熱心になり、「ネットワーク情報収集力」はおのずと高まるでしょう。
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