バイヤーはサプライヤ選定という重要な意思決定について「説明責任」や「意思決定に対する責任」この2つの欠かせない責務を持たされているというお話です。そしてその答えは自分で考えるものなのです。
「答えは何ですか。」「模範解答を教えてください。」
ご存知のようにケーススタディに正解はありません。しかし考えるべき事項は少なからずあります。ケーススタディでは考えるべき事項についてちゃんと検討しているか、またグループ討議を行うのであればそのような事項について討議をしているかどうか、というのが重要なポイントです。ですから「討議すべきポイント」などについての解説はできますが、正解を教えることはできません。もし、しいて言えば「私はどう思うか。」であれば説明可能です。
現実には少なくないバイヤーが「答え」を知りたがります。しかし考えてみてください。
例えば現実世界において上司に「どのサプライヤを選定すべきか、教えてください。」と聞くバイヤーがいるでしょうか。当然いないでしょうし、もし聞かれたとしても上司は「自分で決めなさい」としか答えられません。それでも「答え」を求めてしまう。これは自身の意思決定に自信が持てていないことの証拠なのでしょう。
いずれにしても自信があるかないかに関わらずバイヤーは何らかの意思決定をすることを求められます。ここで重要なのは「理由や論理性の説明責任」です。つまり意思決定に関して他者を説得しなければなりません。
これが調達購買業務に携わる人達に求められる一つ目の重要な責務と言えます。
説明責任とともに、私はもう一点重要な責務が残されていると考え、研修でもそのように説明しています。それは自分が行った意思決定について「責任を持つ」ことです。
多面的かつ客観的で公平なサプライヤ評価の上でスコアが計算されました。しかしそれで最適なサプライヤ選定ができるかというとそんなに単純なものではありません。申し上げたように最終的な意思決定にバイヤーの恣意が入ることは否定できないからです。
重要なのはどうしてこのサプライヤが最適なサプライヤなのかという「説明責任」それから「意思決定に対する責任」この2つがバイヤーに欠かせない2つの責任なのです。
「意思決定に対する責任」の中には選定しなかったサプライヤに対する業績影響などの責任も含まれます。つまり選定したサプライヤだけでなく選定されなかったサプライヤがこの意思決定によって大幅な業績悪化に追いやられる、というようなことも考慮し、責任を持つことが求められるのです。そうバイヤーの意思決定はそれだけ重要な意思決定なのです。
よく要求元や製造部門から調達購買部門は「そんなサプライヤを選定して何かあったらどうするんだ。責任取れるのか。」と言われます。バイヤーはその責任を取らなければならないのです。バイヤーが日々行っているサプライヤ選定などの意思決定はそれだけ重要な意思決定だと言えます。重要な意思決定を担っているからこそ、「説明責任」や「意思決定に対する責任」この2つの欠かせない責務を持たされているのです。
もしそんな責任をとりたくない、もしくは誰かに答えを教えてほしい、ということであれば一日も早くこの仕事から足を洗うことをお勧めします。
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2016.05.06
2020.02.12
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。