人事制度構築を進める上で重要な位置づけである「現状分析」の進め方や、具体的な方法をご紹介して参ります。第1回目は、現状分析の概論についてお話しします。
(1)現状分析の目的
さて、人事制度構築・改定を進められるということは、何かしら実現したいことがあるのではないでしょうか。
例えば、「賞与にもっとメリハリをつけたい」「若手社員でも、実力があれば役職に抜擢できるようにしたい」といったことが挙げられます。
こういったことを実現するためには、人事制度を構築する前に、
①現状、どのような状態になっているのか
②具体的にどのような問題が発生しているのか
③このまま、放置しておくと、どのようなリスクがあるのか
の3点を把握しておかなければなりません。その方法が「現状分析」です。
(2)現状分析の留意点
日々、経営者や人事担当者の方とお話ししていると、現状を「感覚」でとらえられている方がほとんどです。
例えば、「人件費が高い気がする・・・・」「賃金水準が世間より低い気がする・・・・」といったような、感覚・主観に基づく話を頻繁にお聞きします。
現状分析を行う際、上記のような感覚・主観ではなく、定量的・客観的に現状を示すことが重要です。そのための手段として、人件費や給与、社員数といった数値化・定量化できるデータを活用した分析を行うことをおススメします。
現状を客観化することによって、
①社内で課題を共有できる
②意思決定のスピード・質が上がる
③優先順位づけができる
といったメリットがあり、より効果性の高い解決策を講じることが可能となります。
(3)現状分析の観点
現状分析は、①人件費、②人員構成、③賃金水準の3つの観点で行います。より深い考察をする上で、この3つは欠かすことができません。
詳細な分析手法は、次回以降に紹介させて頂きますが、それぞれを簡単に解説すると、以下になります。
①人件費
過去3~5年程度の業績と人件費データを用いて、その推移とバランス(業績が落ち込んだ時に、人件費も下がっているか等)を確認する。
分析指標として、売上高対人件費率や労働分配率を用いる。
②人員構成
年齢や役職、等級、職種といった区分での人員分布を基に、人員に偏りや不足が発生していないかを確認する。
③賃金水準
自社の賃金を世間相場と比較し、社員の定着や採用に寄与する水準であるかどうかを確認する。
また、「職位間で賃金が逆転していないか」「貢献している社員に十分な人件費が配分されているか」等、社内における賃金の公平性を確認する。
以上の3つについて、自社の現状を客観的に掴んでいきます。そして、具体的にどのような人事制度を設計するか、分析結果をもとに方針を定めることが、望ましい人事制度構築の進め方となります。
次回は、「人件費分析」の具体的手法と考え方について、解説したいと思います。
執筆者:岸本 耕平
人事戦略研究所 コンサルタント
大学卒業後、大手パッケージソフトウェア会社に就職。企業が持つ人材価値の最大化の実現を目指し、人事管理ソフトの企画・開発に取り組んだ。新経営サービス入社後は、「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。特に、中小企業ではなじみのない人事データの定量分析手法を用いての多角的な分析を軸にしたコンサルティングを得意としている。
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