コミュニケーションの基本概念として、「自分が話したことがコミュニケーションではない、相手が理解したことがコミュニケーションの結果である。」という言葉があります。
上司は部下に対して、つい自分が言いたいことを一方的に伝えただけで「伝わった」=「相手が理解しているはずだ」と思い込んでしまいますが、実は部下は全く理解していなかった、ということが起こります。
このような現象が起こるのは、相手の理解力、背景にある情報量にギャップがあったり、或いは相手の聴く姿勢が整っていないなど、聞き手側に原因があることもあれば、話して側の話し方に問題がある場合もあります。
つくづくコミュニケーションは難しいものだと思います。
近年、企業の採用担当者のアンケート調査でも、新卒採用の際に重視するポイントとして「コミュニケーション力」が常に上位の回答を占めています。そのくらいコミュニケーションの重要性や難しさを実感している方が多いようです。
さて話を元に戻しますと、上司が部下とのコミュニケーションをとる上で、ひとつ押さえていただきたいポイントがあります。それが「相手の価値観を知る」という概念です。人はついつい自分の価値観を軸において、「相手もこのことを重要視している」などと思い込んで話をしてしまうことがあります。この思い違いを持ったまま話を始めると、相手の心に届いていない話になってしまいます。
以前に顧客先のある管理者に伺った話ですが、ある部下との面談において、相手のやる気を引き出そうと「来年はどんな成長をしたいの?」「どんな能力を伸ばしたいの?」「どんなことをやりたいの?」というアプローチで話をした際、部下がどうもピンと来ていなかったそうです。そして目的を達することができないまま面談を終えた、とのことでした。
ところがある日、その部下とお昼に食事をしていた際、何気ない会話の中で、その部下の同僚の話になり、「最近あいつ相当頑張っているらしいなぁ」という話をしたそうです。すると、急にその部下の顔つきが変わり、活き活きとした表情で「あいつには絶対負けない」というような闘志を見せてきたそうです。それからというもの、その部下の日々の行動量が確実に増えたそうです。
『私自身は、自分のやってみたいことにチャレンジできることや成長できる環境に関心があり、それが与えられると有難いし、やる気が湧く。それは他人も同じだと思い込んでいたが、人によってやる気のスイッチは違うのだ、と実感した』とのこと。
この管理者の方のように「成長」や「チャレンジ」という価値観に軸がある方もあれば、若い部下にとっては「勝ち負け」が重要、という場合もあります。
価値観とは、人それぞれ違うものであり、良し悪しをつけるものではありません。
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