参勤交代は気が重い地方赴任

2016.01.09

組織・人材

参勤交代は気が重い地方赴任

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/殿様は、生まれも育ちも、ずっと江戸。だから、参勤交代は、国元から江戸に来るのではなく、江戸から国元に行く赴任。しかも、国元の実権は城代家老が握ってしまっており、へたをすれば監禁や隠居が待っている。/



 江戸上屋敷で小姓の御機嫌取り親衛隊に守られ、おもしろおかしく暮らしている殿様にとって、ろくに顔も知らぬ連中だらけの国元こそが、最悪の敵地。江戸での数寄風流の贅沢散財や不徳行状の遊蕩三昧は、幕府他家にも知られてしまっている。当然、国元も聞き及んでいるだろう。江戸ででかいことを言い散らしていたが、それを国元の大御所連はどう思っているやら。国が近づくにつれ、心は重くなるばかり。城に着くなり諌言の嵐で、翌年の参勤まで座敷牢に押し込めかも。それどころか、そのまま隠居。ひょっとすると、無理やり「病死」。なにがあっても、国元のことは幕府も見て見ぬふり。



 盆暮の数日、旦那の田舎の実家に「帰る」だけでもしんどい、という東京生まれ、東京育ちの奥方も少なくないそうだが、参勤交代の国元拘束は一年にも及ぶ。会社で言えば、東京「本社」で派手に遊び歩いていたボンボン社長が、古参叩き上げだらけの創業地工場に軟禁され、社状の現実の愚痴を延々と聞かされて、猛省を迫られるようなものか。いや、部長や課長でも、同じこと。権限移譲、などと寝ぼけたことを言って、腹心の部下に任せきりにしていると、人心掌握はできない。手間はわかるが、みずからこまめに現場に出向いて、日ごろから自分が直接個別に相談に応じるくらいでないと。肩書に乗っているだけのお飾りなら、いくらでも取り換えがきく。



(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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