日本民族は古来より「モノづくり」をコンピテンシーとする民であり、「コンセプトづくり」が苦手である。しかし、このコンセプトの創造性なしには、国も企業も、また個人も繁栄は持続されない。
【Envisioning Career-scape 第5景 -01】=======
組織人事の分野では、「人財要件」(あるいは「人財スペック」)という語がよく使われます。
人財の採用・登用にあたって、どんな要件を満たすことを求めるか、ということです。
この人財要件とは、主に、能力・資質面のことを考えるわけですが、
近年はその分類がどんどん細分化しています。
例えば技術系の職種であれば、どんな種類の技術的技能・資格・知識を、どのレベルまで有しているか、
管理職であれば、PL/BSは読めるか、コミュニケーション能力はどの程度か
一般職で職能等級を1段階上げるには、どの能力をどの程度まで上げる必要があるか、など
ともかく人事担当者は細かなマトリックス表をつくって人財の要件管理を行なうわけです。
ま、これはこれでなくせないものであると思います。
その実、私も企業へのコンサルティング事業でこういう設計の仕事もやります。
ただ、この流れのみで人財をとらえていくと、見失うものがあると私は感じています。
人財を見つめるにあたって、
もっと大きなゆるいくくりで
大元のところの人財要件を考える必要があるのではないかと思います。
そこで、私が考えるこれからの時代の大事な人財要件を3つ述べます。
これは私が日ごろ企業研修を行なって、
今の働き手(一般従業員、管理職、経営者のすべてを含む)の中で
脆弱化しているなと感じるものでもあります。
その大事な人財要件3つを先に紹介すると
1)「コンセプト創造」性
2)「賢慮・美徳」性
3)「自律した強い個」のマインド です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
1●「コンセプト創造」性
この「コンセプト」という語は「概念」という訳語では狭くてしっくりこないので
そのまま英単語を用います。
ともかく、日本人はこの「コンセプト」の創造が下手な民族かもしれません。
乱暴な言い方を許していただければ、
日本人は古来より「モノづくりの民」です。民族のコンピテンシーは繊細で器用な手先にある。
一方、アングロサクソン人は「コンセプトづくりの民」かもしれません。
新しい概念をつくって、仕組み化する、そしてその胴元になって自らを潤すことに長けている。
日本人は、一生懸命、優秀なゲームプレイヤーになろうとするが、
アングロサクソン人は、努めて、ゲームプロデューサー/オーナーになろうとする。
これからの時代は、情報化社会から一歩進んで「コンセプチュアル社会」に移る。
また、「ハード/ソフトづくり」を超えて、
「コンテクスト(文脈)づくり」をうまく成し遂げた者が優位に立つビジネス世界となる。
そんな状況にあって、
個々の働き手に求められる人財要件のひとつは「コンセプト創造」です。
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【5景】これからの時代の人財要件3
2008.01.21
2008.01.17
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。