ソニーが今年7月、クラウドファンディングとEコマースのサービスを兼ね備えたサイト「First Flight」を立ち上げた。その背景には同社が力を入れる新規事業創出プログラムがある。新たな顧客価値の創造を目的に、社内から提案される新たなビジネスコンセプトのスピーディーな事業化を促そうという取り組みには、創業から全盛期にかけての“ソニーらしさ”が感じられる。その最新の取り組みを追う。
■研究から製品化、プロモーションまですべてに関われることの幸福感
この「AROMASTIC」のチームリーダーを務める藤田修二氏は理学博士で、ずっと厚木の第2研究所で研究一筋の日々を送ってきたのだという。ところが、今回、光ディスク技術を応用した香りのカートリッジを使った新機軸の製品、アロマスティックのプロジェクトが社内オーディションを通ったことをきっかけに、製品化からプロモーション、パンフレットづくりにまで関わることになり、これまでとは全く異なる展開にわくわくしていると目を輝かしている。
ソニーには元々、「人々の心を動かし、感動を与えるというミッション」があると聞く。自分がいいと思ったものはきっと世界の人々の心を動かし、感動を与えるはずだとし、信じた道を突き進んでいくのが、ソニーの企業文化だったはずだ。それがいつのまにか「売れるもの」しか作らない。製品化しないという縮こまった考え方へと変化してしまっていたようにも感じる。
今回、「First Flight」という舞台において支援者を募るだけでなく、その声を聞いて製品化の際にブラッシュアップしていくという“共創”という時代を先取りする試みをいち早く取り入れている点はいかにもソニーらしいのではないだろうか。
さて、この「AROMASTIC」だが、11月20日~2016年1月20日まで、1本8980円(税込)として支援(予約販売)を受け付けている。このクラウドファンディングの仕組みは、その支援額が目標に達した場合にのみ製品化されるため、がんばってほしいところだ。支援といっても、募金するのではないため、予約販売と考えればわかりやすいかもしれない(目標額に達しない場合は支援金額が引き落とされることはない)。
「香り」はとても繊細だけれと心に与える力はとても大きい。気持ちのスイッチを入れてくれる魔法のスティック「AROMASTIC」プロジェクトの成功を祈りたい。
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2015.07.10
2015.07.24
株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー
新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立し、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。