ユーザー数250万人、導入企業数2万6000社。2007年9月遂にIBM「Lotus Notes」を抜いて国内グループウェアのシェアナンバーワンの座を勝ち取ったサイボウズ。創業時にはベンチャーキャピタルから「勝負にすらならない」とまともに相手をしてもらうことさえできなかったベンチャーは、わずか10年でIBM、マイクロソフトなどのビッグネームを打ち負かすまでに成長した。同社の奇跡的ともいえるサクセスストーリーの真相を青野社長に伺った。
最終回
「和のソフト、サイボウズ」
■サイボウズとLotus Notesの違い
「一部のエリート社員がバリバリ使いこなすのがLotus Notes。これに対してサイボウズはパソコンが苦手な人も含め誰もが使えるお手軽グループウェアですね」
青野氏は謙遜する。なるほど確かにその開発コンセプトは手軽な操作性にあったかもしれない。しかしサイボウズには、欧米起源のソフトとは根本的な違いがあったのだ。それは『和』の思想である。
「みんなが使えないとグループウェアとして意味がない。僕らは最初からそう考えたわけですけれど、この考え方自体がすでに日本的だった。だから日本で支持されたんだと思いますね」
いささかステレオタイプな見方になるが、Lotus Notesなどとサイボウズの背景にある思想を単純化すれば『個対和』となる。これは仕事の進め方と密接に関わる問題だ。
「たとえばOutlookというソフトがありますよね。あれをマイクロソフトはグループウェアだというわけです。しかし僕からみれば、あくまでも個人ツールですよ。大切なのは、そうした認識の違いを生み出すバックボーンを理解しておくことじゃないでしょうか」
ポイントはここにある。つまりサイボウズこそは日本人が働く日本の企業で、日本的に仕事を進めていく上で必要となる『場』を提供できるグループウェアだったのだ。人は個人で仕事を進めていくものだという思想でモノ作りをしているのがマイクロソフトなら、サイボウズは仕事とはみんなで成し遂げていくものという考え方で作られている。
「だからサイボウズが日本で受け入れられたのかもしれません」
もちろんシェアトップを獲得するために、さまざまな手を打っても来た。成長段階で最重要の課題となったのが大企業に頭から、つまり情報システム部門を正面突破して入ることだ。
「せっかく部門がこっそりサイボウズを入れてくれたのに、ある日突然情シスがサイボウズ禁止、なんて宣言を出すんです。そんなソフトを使ってないで全社的に導入したソフトを使いなさいってことですよね。こりゃ何とかしないととんでもないことになると焦りましたね」
そこでスケーラビリティのある『サイボウズガルーン』を開発し、販路も新たに大企業営業専門のパートナー企業と組んで開拓、新たなマーケットを切り拓いてきた。
■ありんこはありんこの歩み方で
創業以来10年間に渡り、サイボウズはただの一度も赤字を出していない。マザーズから東証二部、そして東証一部への上場も果たし順風満帆の成長を遂げる中で社長を引き継いだ青野氏は、積極的なM&Aに打って出る。
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FMO第3弾【株式会社サイボウズ】
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