『サイボウズ』はいかに日本一のグループウェアとなったのか?2

2007.12.26

開発秘話

『サイボウズ』はいかに日本一のグループウェアとなったのか?2

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

ユーザー数250万人、導入企業数2万6000社。2007年9月遂にIBM「Lotus Notes」を抜いて国内グループウェアのシェアナンバーワンの座を勝ち取ったサイボウズ。創業時にはベンチャーキャピタルから「勝負にすらならない」とまともに相手をしてもらうことさえできなかったベンチャーは、わずか10年でIBM、マイクロソフトなどのビッグネームを打ち負かすまでに成長した。同社の奇跡的ともいえるサクセスストーリーの真相を青野社長に伺った。

第二回
「ネット販売しか選択肢がなかったんです」


■ノーリスク・オペレーション

「製品は完成したんだけれど、一体どうやって売るのか。肝心なことをまったく考えてなかったんですね」

マーケティングのセオリーでいう4P、つまりProduct(製品)、Price(価格)、Promotion(コミュニケーション)、Place(流通)。最近ではPackageを加えて5Pといわれることもあるが、何しろわずか3人の素人集団となれば専門知識を持つ人間もいない。

「そもそもマーケティングのことをきちんとわかっている人間なんて誰もいなかった。とはいえ社長はお金の面倒を見なければならないし、畑さんは製品開発、すると自然に僕にお鉢が回ってきますよね」

そこで青野氏がまず取り組んだのが販路開拓である。本来なら、この手のビジネス用パッケージソフトは、きちんとした箱に入れ分厚いマニュアルもセットした上で、営業マンがビシッとプレゼンテーションをしてから商談に入る。

「しかし、そんなのとんでもねえ、ですよ。そもそもパッケージに入れて売るなんてリスクを取るわけにはいかない。パッケージ代がかかる上にデザイン代も必要になるから。そこまでお金をかけて仮にお店に置いてもらったとしても、無名の会社の無名のソフトが一体どんな扱いを受けることか。せいぜいラックの隅っこにでも突っ込んでもらえればマシな方でしょう」

販路がなければ、買い手との接点もできるわけがない。本来ならこの時点で八方ふさがり、万事休すとなるはずだが、ここでもサイボウズは時代の流れという女神に手を差し伸べられることになる。

「そうだ、インターネットがあるじゃないかって。僕が松下にいたときには、いろんなソフトをダウンロードして買ってたんです。これだ、これしかないと」

97年秋といえば、OCNエコノミーが広まりつつあるタイミングである。これを使えば一ヶ月3万円で128の専用線を引ける。今のようなブロードバンドでこそないものの、当時としては画期的に速い回線を企業が競うように導入し始めていた。わざわざコストをかけて高速回線を引くところにはたいていITに高い関心とそこそこの知識を持つ人間がいる。

「その人物こそ、松下時代の僕そのものなんですよね。暇があったら便利なソフトはないかなあって、ネットを検索してた自分のことを思い出した」

この瞬間、青野氏の頭の中でアイデアがスパークした。使いやすいグループウェアをネットにのせれば、それを『探す』人が必ずいる。なぜならインターネットの本質の一つは間違いなく情報検索だから。

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