『おらがXX』と購買のアカウンタビリティ

2015.05.14

経営・マネジメント

『おらがXX』と購買のアカウンタビリティ

野町 直弘
調達購買コンサルタント

グローバル調達や集中購買の阻害要因が実はバイヤーの「おらがXX」的な意識にあるというお話について書いています。

例えば海外の工場の購入品に関する品質不具合が発生した時にそのスムーズな対応ができるのかというような点。当然、このような事案に対する対応は対サプライヤだけでなく対社内に対する調整も含まれます。そうすると心理的な制約がどうしても出てくるのです。これらが正に「おらが工場」や「おらが製品」的な思考と言えます。

中国の生産工場には今まで購買をやっていた現地採用のバイヤーがいます。それに対して品目リーダー制(コモディティリーダー、カテゴリマネジャーともいいます)をとり、「明日からあなたがアカウンタビリティを持って購買をやってください」と言われても、やはり現実味はありません。本当にできるのか、という不安が先に立つことでしょう。またそれも現地のバイヤーと比べてよりパフォーマンスが出せるか点も危惧されます。

これは、グローバル企業といえども工場毎の購買で、中国工場でどのような製品を生産しているかも分からない、サプライヤの工場すら見たことがないというケースは少なくないからです。このようなバイヤーにいきなり全世界の購買の権限と責任を持ちなさいと言っても無理な話でしょう。

これが「おらが工場」や「おらが製品」的な思考です。グローバル化しても「おらがXX」の思考は必ず残るものです。

一方、企業によってはグローバル調達体制やアカウンタビリティを整備し、上手くいっているところもあります。上手くいっている企業に共通する点の一つが購買部門の位置づけです。このような企業の場合、購買部門は各工場や生産本部の傘下ではなく、購買本部という機能組織になっていることが多い。また各工場との結びつきよりもむしろ、開発・設計部門との関係が強いことが上げられます。

このような体制やアカウンタビリティの設定が「おらが工場」的な思考に陥り難くしている結果なのかもしれません。このように体制やアカウンタビリティの設定で「おらがXX」的な思考による弊害を超えていくことはできるのかもしれません。

集中購買、共同購買、グローバル調達などの取組は「トップダウンが必須」ということは言うまでもありません。しかしこのような「おらがXX」的な思考が残る限り、トップダウンだけで上手く進むことはありません。購入品毎にアカウンタビリティの持たせ方に無理はないのか、最適なアカウンタビリティの持たせ方はどうなのか、という視点から組織設計や体制の整備を行っていく必要があります。

集中購買、共同購買、グローバル調達など、トップダウンでないから進みません、という言葉が昔からよく聞かれました。しかし実は制約になっているのはバイヤー個々の「おらがXX」的な思考法という極めて内なる課題であったという極めてアナログな指摘でした。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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