調達購買人材に必要なスキルは大きく三種類に分類されます。
一方で「深い専門性はあまり必要ない」という考え方もあります。
優秀なバイヤーはどんな品目を担当しても優秀なバイヤーであることからもこの意見には頷けます。これらの優秀なバイヤーに共通して言えることは「必要な情報が何かを理解してその情報を揃える(入手する)のが上手い」ことです。自分が担当している品目について何を理解しておく必要があるかが分かれば、後は効率よくサプライヤから聞き出したり、社内から聞き出すことが上手ければよいので、購入品に関して詳細な技術的知見などがなくても調達購買としての仕事はできるという考え方なのです。
あるバイヤーによると全く経験したことがない品目でも三回案件を回せばプロフェッショナルバイヤーになれるとおっしゃっています。その際に重要なのは何社競わせるか、ということです。最終的には最低でも3社の真剣な見積りを入手したい、そのためには見積依頼は最低でも5社にしたい、そのためには7-8社の候補先に引き合いを出したい。この7-8社の引合先を見つけるのが一番のポイントだとそのバイヤーは言っています。そのためにはサプライヤの情報やサプライヤを見つける能力は必要だが、購入品の詳細な技術的知見などはなくても競争環境を作ることはできるとのことです。また三回案件を回せば自然と見積書の項目(構成や工程)を定義することができるようになると言います。そのためには購入品や購入サービスの中味が分からないとできないのは当たり前ですが、素人でも工夫したり確認したりすることで早期キャッチアップは可能であるとおっしゃっています。これはこれで尤もな意見です。
このように品目/業種スキルの専門性については様々な意見があります。
ここでもいくつかの共通する考え方は存在します。以下はこの共通する事項について述べていきます。
一つ目は購入品もしくは業種により求められる専門性は異なる。これは先の自動車とハイテク業種の違いしかり、非常に専門的なサービスである例えばCRO(製薬業界の治験等の委託)のような専門的サービスと汎用的な事務用品の購入ではやはり求められる専門性のレベルにも差があることは当然です。
次に言えることは「専門性は持っていればいるほど良い」ということです。これは誰も異存はないことです。しかし全ての購入品に関して詳細の技術情報や専門性を持つことは不可能です。ここで言いたいことは「専門性を持つ努力や情報収集を怠ってはならない」ということです。事務系バックグラウンドのバイヤーが「私は技術屋じゃないから専門的なことは分からない」ということがありますが、それは学習するための機会を自ら放棄していることです。品目担当になったということはその品目に関しては社内で一番の専門家であると自負できる位の知識習得への意欲は欠いてはいけないのです。
最後に取り上げたいのは最低限必要な専門性があるということです。つまりある程度の専門性は必要だと言うことです。それはどのレベルでしょうか。
購入品は何らかの原材料や構成品を加工したり組立てたりプロセスを踏むことで
製品化されます。図面はあくまでも完成した姿でしかありません。その完成した姿(製品やサービス)は多くの原材料や構成品とそれらの加工工程が必要です。これはあらゆる購入品や購入サービスについて言えることです。
もしあなたがその品目のバイヤー担当であればその品目を製品化する加工工程を理解し購入品のコスト構造を理解することは必要なスキルです。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。