もしアンドロイドが車を作ったら?

2014.09.18

経営・マネジメント

もしアンドロイドが車を作ったら?

野町 直弘
調達購買コンサルタント

「もしアンドロイドが車を作ったら」のアンドロイドはGoogle社の開発しているOSの”Android”ではありません。アンドロイド・インダストリーズという自動車生産会社のことです。アンドロイド・インダストリーズ社(以下アンドロイド)は自社ブランドを持たず、GM、クライスラーなどの米自動車大手3社を顧客に持ち生産を委託されている企業です。言い換えると自動車版EMSでしょう。

一点目は電気自動車の普及です。
先日米国テスラ・モーターズが日本での高級電気自動車の納車を始めたという発表がされています。電気自動車はエンジン付きの自動車やハイブリッド車に比べて非常にシンプルな構造となっています。例えば先のテスラ・モーターズの高級スポーツ電気自動車「モデルS」のモーター回りの部品点数は約100個であり、エンジン部品の点数の1万~3万点に対して比べものにならない位シンプルな構造です。日経新聞によるとi-phoneの組立てを中国でやっている台湾の鴻海精密工業がテスラの組立てをやるという噂も流れていたようです。
このように電気自動車の普及は自動車産業の参入障壁を一気に低くするものです。

もう一点はボディーメーカーの存在です。ボディーメーカーは一般的にはOEMメーカーと呼ばれます。あまり知られていませんが、日本の自動車メーカーは数多くのOEMメーカーに生産を委託しています。OEMメーカーは設計の(一部を)担当しているケースとそうでないケースがあります。特にトヨタ系列のOEMメーカーはボディメーカーの数も多く、各ボディメーカー間で生産性を高める競争に数十年も前から置かれています。
つまり設計と生産などの摺合せは生産会社が設計会社と別会社であろうと、比較的スムーズに行えるような下地(仕組み)が既にできているのです。
1995年頃に私がある外資系コンサルティング会社にいた時に自動車業界向けのレポートを発表しました。そこでの分析はバブル経済崩壊後の自動車メーカーの収益と保有する工場の稼働率に強い相関が見られる、という内容でした。つまり自動車産業はバブル崩壊後装置産業化が進展している。その中で工場稼働率を上げるための混流生産や生産方式の採用が有効であり、また在庫を最適化するサプライチェーンマネジメントが収益向上には求められるというものでした。
このような点から現在は系列のボディメーカーに生産委託していたものをより混流生産などで優位な生産効率を持つ非系列会社に委託することは容易に考えられます。

このように自動車業界でも電子ハイテク業界と同様の水平分業、生産専門会社の発展という動きが進展する可能性は低くないのです。逆にグローバルでのこのような流れを見誤ると電子ハイテク産業同様に日本の自動車産業の競争力が低下し、産業全体が衰退するリスクを含んでいることもあり得るわけです。
今後はこのような事業モデルとの競争を想定した上で事業モデルを再構築していく必要があると言えます。
そう、アンドロイドが車を作り高生産性、低コストを実現している状況は既におこりつつあるのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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