15-6年前にあるジョークがはやりました。その当時はただ面白いな、と思っていましたが、今考えてみると多くの洞察が含まれています。
しかし一方で、日本の電子産業の衰退には歯止めがかかりません。従来は自動車と並ぶ外貨の稼ぎ頭であった電子産業は2013年に貿易収支がとうとう赤字になりました。
また国内生産額は2000年の26兆円をピークとして2013年には約11兆円と半分以下に落ち込んでいます。生産の海外移転という要因もありますが、その代表的な製品であるテレビ、半導体については海外メーカーとの競争に負けていることは事実です。
手元に日経テクノロジーonlineの記事「電子立国は、なぜ凋落したか」という記事があります。この記事は元日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が書かれたもので、日本の電子産業が何故衰退したのか、を論理的に
分析したものです。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131120/317532/
西村氏はこの中で日本の電子産業が衰退した大きな要因をいくつかあげています。
一つ目は2000年後半における日本のテレビ・メーカーの巨額な設備投資です。これはあくまでも国内における地デジ特需による国内需要の急伸を「地デジ移行後に売れなくなったらどうするか」というこを考えずに大型投資を行ったため、供給過多な状況になってしまい現在の収益悪化につながった、ということです。
最近家電量販店に行くと中国、台湾、韓国製のテレビが多く売られています。西村氏はテレビは既に外国から買うものになった、言っています。
大きな要因の二つ目は世界的に進行した水平分業型モデルに乗り遅れたことを上げています。世界の電子産業では1980年代後半から設計と製造の分業が色々な製品分野で進みました。それに対して日本企業は一般的にこの分業を嫌い、「垂直統合」と「自前主義」に固執したと西村氏は分析しています。結果的に進化した水平分業モデルは特にEMS側(製造側)に多額の設備投資を可能とし、結果的には低コスト、高生産性を実現することができました。つまり電子機器の製造は装置産業化したということです。
その典型的な業種が半導体です。1980年代後半には世界生産の半数のシェアを占めていた日本メーカーの半導体生産は専業2社に集約され、その2社も苦戦を強いられています。1980年代後半から半導体産業は水平分業が進みファブレスとファウンドリによる分業が広まりました。今や設計と製造を統合した事業形態である米インテル、韓国サムスン電子ですらファウンドリ事業に積極的に取り組むことで投資負担リスクを低減する方向にあるようです。
特に最近の半導体は製造技術が高度化しているため、製造装置は高額になり、以前より一層装置産業化しつつあります。これに対応するためには、なるべく多数の会社から製造を受注し稼働率を上げられるファウンドリ事業でなければ勝てなくなってしまったのです。
一方で2000年代後半には日本企業の中にも一部のベンチャー企業でファブレスが立上がったものの、日本の半導体メーカーはファウンドリになろうとはしなかったとのことです。その要因の一つとして上げられるのが日本的な「ものづくり礼賛」神話だと、西村氏は指摘しています。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。