チームビルディングというと実際のところ何に役立つのか分かりにくいと言う声を聞きます。「組織構築法」「組織力強化法」「チーム力を引き出すためのリーダーシップ理論」「部下のモチベーションを引き出す方法」などなど、チームに関わることを網羅的に包含していることが、益々チームビルディングを分かりにくくしているのだろうか。本記事がチームビルディングを身近に感じ取っていただける手助けになれば幸いです。
アクティビティの取り組みが進み、最後のアクティビティになりました。スパイダーウェブ(蜘蛛の巣)というアクティビティです。蜘蛛の巣のように網目状に張られたロープの間をロープに触れることなく通って、こちら側からあちら側に抜けるアクティビティです。
全員が通り向けられれば終了です。ただし、ひとりでもロープに触れれば最初からやり直しになります。
さて、スタートです。チームはここまでの取り組みで充分にチーム成長を遂げていましたから、手際よく話し合いが始まりました。ところが体の不自由な彼は、話し合いの輪には加わらずひとりポツンと話し合う仲間の背中を寂しそうに見ていました。
話し合いは短時間で個々の役割が決まり、メンバー全員の網目を通る順番を決める段階に入りました。
この時まで彼は傍観者でいようと考えていたに違いありませんでした。
しかし、チームメンバー全員が彼を振り返り、その輪に向かい入れ、彼の順番とチームが一丸となって彼を支えることを宣言したのです。
その瞬間、それまで以上にチームの一体感と全員の決意が一気に高まったことは、誰の目から見ても明らかでした。
結果、彼らの動きはチームという一つの生き物をみるようでした。一つ一つの行動に全員が集中し、全員が様々な役割を発見しては瞬時に動く。まったく言葉を介さずに。
そして、彼の順番がきました。驚くことに彼らが選択した場所は最も難しい場所でした。最も高い場所にある小さな網目です。
全員で彼を支え頭の上まで持ち上げます。チームの集中力が一気に高まります。そして、ゆっくりと着実に網目を通していきます。
支えられた彼は笑顔でしたが、目からは涙が溢れていました。
そして、無事に通し終わり、彼が安全に着地すると同時に大歓声が沸き起こりました。
その後もその勢いのまま、あっという間に全員が網目を通って行きました。
結果、達成時間はこれまでのどのチームよりも早い最速タイムを叩き出しました。
この時の衝撃を忘れることはありません。この結果は何を物語っているでしょうか。
体の不自由な彼だけを見ればチームにとっては重荷だったかもしれません。しかし、それを責めても、無理矢理に他の人と同じように強制をしても、この成果は生まれなかったと思うのです。
個々の違いをチームとして受け入れ、それを皆が支え合い、全員が本気で取り組む。その姿勢が個を超えてチームとしての高い力を生み出したのです。
この出来事は、彼らチームを大きく、大きく変えました。それからの彼らは常に笑顔を絶やさず、互を認め合いながら何に対しても全員が発言し、チームとして全員参加のもとに組織運営が行われていました。
この姿の中に本来のチームのあり方を感じました。
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2014.05.11
2014.06.01
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。