『民間医局』はなぜ、医師紹介で日本一なのか? 最終回

2007.12.11

経営・マネジメント

『民間医局』はなぜ、医師紹介で日本一なのか? 最終回

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

医療制度はいま、大変動期を迎えている。医師の紹介に関して圧倒的な影響力を発揮してきた大学医局が弱体化、若い医師を中心に自由な動きが活発化している。そんな状況の下で急激に業績を伸ばしているのが『民間医局』、メディカル・プリンシプル社が展開する医師限定の人材紹介業だ。その登録医師数は他社の追随を許さない、しかも優秀な医師が多く集まっている。同社のビジネスモデルと成功の秘密を中村敬彦社長に伺った。

「だからといっていつまでも我々に対する追い風が吹き続けるとは考えていません」。中村社長はすでに次の策を打ってもいる。医学部に在学中の学生に対するサービスの提供である。

制度変更は、医学部生にとってももちろん福音となった。同じ大学生でありながらこれまでは、医学部生だけが自分の就職先を自分で自由に決めることが難しかったのだ。ところがこれからは違う。医学部でも他の学部同様、就職を自由に考えることができる。

しかしである、これまで医学部生は特殊な環境におかれてきたために、彼らに対する情報提供の仕組みが用意されていない。すなわち他の学部生に対するような至れり尽くせりの就職情報サービスは医学部生向けにはないのだ。ここにビジネスチャンスがある。

「一般の学生向けには、これでもかというぐらいに情報提供サービスがあります。ところが医学部生にはない。我々が提供しているサイト『レジデントナビ』が唯一なんです。これはチャンスですね」。

 
医学生とのチャネルを太くすることは、『民間医局』のビジネスモデルにとって重要な意味がある。すなわち将来の医者とのインタラクティブな関係が構築できるわけだ。だから彼らに対しても『レジデントナビ』で十分の情報提供を提供する。当然、サービスを受けた医学生たちの中で『レジデントナビ』引いては『民間医局』に対するブランド・ロイヤリティが高まっていく。医師免許を取得後も継続した関係が作られるのだ。

ビジネスをスタートした時点での勝算は、確かに中村社長の語る通りになかったのかもしれない。しかし、その後の同社の展開をみれば実に理路整然と「勝つためのマーケティング」を実行してきていることがわかる。何より「日本の医療をよくしたい」という思いで一本、ビシッと筋が通っていたことが強い。

明確なビジョンがあり、ビジョンを達成するために緻密に戦略を組み立て、実行にあたっては妥協しない。当たり前のことを当たり前に、しかし髪の毛一本ほどの妥協も許すことなく遂行する。『民間医局』を医師の人材紹介についてはダントツのナンバーワンに、ビジネスモデルでみればオンリーワンの存在にした背景には、こうした姿勢があったのだ。

(*注1)
メディカル・プリンシプル社は、職業安定法(以下、職安法)に基づいた厚生労働大臣許可の「有料職業紹介事業者」として事業を行っている。職安法第32条では「求職者」から職業紹介に関しての手数料等を徴収してはいけないことになっており、民間医局に登録する医師は、この職安法上の「求職者」に相当する。

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